市場問題プロジェクトチームの佐藤尚巳氏の発言に感動したので主旨を図解してみました
豊洲問題。
9月29日に市場問題プロジェクトチームが開かれました。
最初から話題が先にそれますが、この最初に自分が言いたい問題を書くのは橋下徹さんのTwitterでの文体を参考にしています。
これ後で自分が見返すときにとても良いんですよ。
さて市場問題プロジェクトチームですが、参加者の一人、佐藤尚巳専門員の発言が私の周囲で話題になりました。
佐藤尚巳氏はどんな人?
佐藤氏は国内、国外の大型建築物の何度も建築なさっている方です。ご自身のHPで経歴を見ると大変なエリートで、東大卒業後、ハーバード大学、国内の設計事務所に就職したのち、ケンブリッジ、ニューヨークの事務所を渡り歩き、現在は国内で仕事をなさっているようです。
この佐藤氏が今回の市場問題プロジェクトチームの初会合にて、豊洲新市場の建物の「地下の空間」について、わざわざ言及し、「東京都の技術系の役人の方の名誉にかけて(中略)正しい選択であった」と断言しました。
小池知事を筆頭にして東京都が何か悪いことをしたんじゃないか、手抜きがあったのではないかと疑っているような雰囲気の中、この市場問題プロジェクトチームという公式の場において専門委員が勇気をもってこのように発言したことに、私は素直に感動を覚えました。
この発言の一部始終は現在のところ、東京都のHPには公表されていないのですが、「目が覚めて思うこといろいろ」の共通一次世代(@megasametaro)さんが該当部分をテキストに書き起こしてくださっていました。
ちなみに会議の動画はすでにアップロードされています。
第1回市場問題プロジェクトチームテキスト・録画映像 | 東京都
地下空間について伝えたかったこと
豊洲の地下空間は独特のもの
まず佐藤氏は豊洲の地下の空間が通常の大型建築物とはちょっと異なる独特のものであることを伝えます。そしてこの空間について「非常に大きな誤解」があると言いました。
佐藤氏はなぜこの空間が生まれたのか、この空間を作ることによってどのような利点があったのかを佐藤氏は丹念に説明してくれています。それを大まかに分けると3つのメリットがあるようです。
1、コスト削減
まずこの空間についての大きな誤解の一つに「地下に大きな空間を作ったことによって、物凄い出費をしてるんじゃないか」があると佐藤委員は言います。
この工事、当初の予定では、地は全部を掘り返しそこに盛り土をすることになっていました。ところが、そのあと建物を建てるわけですからその分の穴をまた掘削しなくてはなりません。これは誰が考えても無駄です。
佐藤委員はこれを家の建築にたとえて
自分の住宅を作るときに1メートルの土盛りをして75センチ削って工事をするというような提案があった場合にバカじゃないかと、なんでそんな無駄なことをするんだと、言うに決まってますよね。
と表現しています。
第17回豊洲新市場予定地の土壌汚染対策工事に関する技術会議 説明資料 21ページより引用
都の技術職員はどうせ一度掘り返すのだから、最初から穴をあけて盛り土を積むという作戦でコスト削減をします。
上の図はそうして作り上げられた盛り土です。建物の入る部分だけが穴が開いているのが分かります。
佐藤委員は1㎥(リューベ)あたり1万円のコストがかかると仮定し、盛り土を盛るのに100億円、そこから穴をあけるのにさらに75億円の費用を削減したのだと言っています。これは仮定の数字ですが、どうやらこれでも過少に見積もった数値らしく、実際にはもっと費用がかかったのではなかという発言もしています。
2、保守メンテ性
通常の家屋でもそうですが、大型建築物でも地下には様々な配管類が通り、排水など建物の維持に必要な機能を果たしています。
通常の大型建築物ですと地下ピットと呼ばれる施設なのですが、この豊洲新市場はとても巨大な建物のため、もし通常と同様の地下ピットを作ると「250から300くらいの小部屋がザ~ッと並んでる(佐藤氏)」という状態になるそうです。
このような状態ですと仮に配管が老朽化などして破損したときに、破損部分を特定し修理することがほぼ不可能になります。照明もなく、換気用の設備もないため、作業員が250以上ある部屋の中から問題個所を見つけ出す前に酸欠になってしまうからです。
なんと動画がアップロードされてました。
ところが豊洲の地下は報道の通り大きな空間です。これですと、大きな空間になっているので行き来が容易です。破損個所の修理もすごく楽になります。
佐藤氏によれば配管類は20年から25年くらいで更新するようです。もしこれが地下ピットだと更新作業は絶望的ですが、大きな空間にしたことによって保守メンテ性が高まった、その分だけ建物を長く使えるようになったのだと佐藤氏は説きます。
3、地下水管理システム
そもそも、この地下空間が最初に発見されたときに地下に水が溜まっていたことが問題となりました。
建物が建築される前に、豊洲の地下水は環境基準レベルまで浄化する工事が行われました。地下水のモニタリング調査ではその工事が成功であったことを物語る数値が上がってきてます。
しかし、相手は目に見えない地下水です。万が一にも汚染された地下水が上昇しないよう、豊洲新市場では地下水をくみ上げるための地下水管理システムが併設されています。世界でも類を見ない設備です。
今回、この地下水管理システムが作動する前に何らかの事情によって地下水がこの地下空間にまで侵入してしまったわけですが、そもそも、これが地下ピットであったら気が付きもしなかっただろうと佐藤氏は言います。なぜならその部分まで、入っていくことができないからです。
これが今回、地下空間を設けたことによって地下水が侵入しているかどうかの確認ができるようになった、つまり地下ピットも地下水管理システムの一部としても有用な空間であると佐藤氏は指摘しています。
地下空間を作成した都の技術職員は優秀である
以上のように、地下空間というウルトラCを決めることにより、コスト削減、保守メンテ性、地下水管理の3つの利点が生まれたわけです。
このメリットをきちんとしかるべきタイミングで公表しなかった点、情報連絡がうまくいっていなかった点は確かに問題です。
しかし、地下空間を作成したことそのものは、責められるべき点ではなく、むしろ技術者として、あるいは公務員としての使命を十二分に果たしているのです。
地下空間は、非常に有用な空間であり、都の技術職員の英知、正しい判断であったのだと佐藤氏は主張したのです。
私の感想
今まで地下空間はさまざまな憶測を呼び、一体何のためにあるのかがよく分からない状態でした。もちろん、その有用性などは有識者によっていくらか指摘されていましたが、大型建築物を実際に手掛けた専門家が、公式の場所でその利点を説き、この作業を実施した職員を褒めたたえたことは素晴らしいことであると思います。
市場問題プロジェクトチームはまるで犯人捜しのようなそんな雰囲気のあまり見ていて気持ちの良くない会議でした。
確かに東京都にはいろいろと問題があります。
東京都政。一点不可解なのは、盛土があるとの答弁書を惰性で使っていたとのこと。役所では普通はあり得ない。議会答弁は役所内関係各所で調整する。知事が答弁するとなれば全庁的に調整する。これもきちんと行われていなかったとういのか。
— 橋下徹 (@t_ishin) 2016年10月1日
どうにもこの問題は橋下さんが正論を吐き続けているので引用が多くなってしまいますが、橋下さんの指摘する通り都の意思決定プロセスには問題がありそうです。
しかしそれはそれとして、きちんと職責を果たした職員について、まずはきちんと褒めたたえるのがリーダーの役割ではないでしょうか。
この点については、私は小池都知事に対してはっきりと批判をいたします。
現場の技術系の職員は、自らの使命を十二分に果たした"匠”であったのだ、とそう私は主張したいと思います。
お母さんのための社会問題講座~豊洲の汚染水について(2)~
前回は、豊洲の汚染水がどのような性質のものかについての解説をいたしました。
今回は、この汚染水が実際にどう処理されてたか、そして豊洲全体の地下水の流れについてのお話になります。
まずは汚染水処理プラントの仕組みについて
豊洲の汚染水処理は、まず地下から汚染水を汲み上げて地上で処理する方法がとられています。まずは図の上の四角い枠にご注目ください。
汚染水処理プラントで何が行われているかについてまずはご説明します。
汚染水処理プラント
地下からポンプなどで汲み上げられた地下汚染水は「地下水時浄化プラント」で浄化処理が行われます。写真は東京中央卸売市場より転載。
ここで大きく分けて3段階の処理で汚染物質を除去していきます。
1、油の除去
まずは地下水が重油等によって汚染されている場合はこれらの油を取り除く作業からはじめます。
水と油が分離する性質は誰しもがよく知っていると思います。まずは汲み上げた汚染水の水面に浮かんだ油を水と分離し処理します。
2、ベンゼン類の除去
次の工程は汚染水にベンゼンが混じっている場合の処理です。
ベンゼンには水に溶けない、揮発しやすいという性質があります。そこで空気を注入し、ベンゼンを気化させます。注射などでアルコールを塗った後、息を吹きかけるとすぐにアルコールが乾きますよね。原理としてはあれと変わりません。
気化してガスとなったベンゼンは、土壌汚染と同じように活性炭フィルターで吸着して回収します。
3、シアン化合物、重金属類の分離
どうしても科学用語が出てきてしまうので、ここがある意味今回の山場です。知識のある方にとってはかなり大雑把な解説だと思われますが、今回の記事の趣旨は分かりやすさを優先しているためご容赦ください。
先に結論だけ述べると、汚染物質を処理剤を使って土の粒子と一緒に沈殿させてしまう、というやり方で処理しています。以下、説明を飛ばしてもかまいません。
シアン化合物、重金属は水に溶ける性質があります。これらの物質は水中でマイナスの電荷を帯びて浮遊しています。
図では大雑把に「イオン状態で浮遊」と表現してあります。イオンと言う言葉が分からなかったら「原子レベルまで細かくなったマイナス状態のシアンor重金属類」というイメージで大丈夫です。
そしてこれらの「シアンor重金属」はマイナスの性質を持っているため、プラスの性質のものとくっつこうとします。そこでプラスの性質をもった水処理剤を投入すると、処理剤と「シアンor重金属」とが引き合って大きな塊になります。
このとき、水中にある土の粒子も巻き込んで塊になるため、反応してできた物質は泥になって水底にたまっていきます。
これを凝縮沈殿法といい、豊洲では主にこの方法で水が処理されています。
ちなみに底に溜まった泥はセメントなどの材料に再利用されているようです。
※さらに分かっている人向け
技術者会議の資料では、シアンに対しては反応槽で紺青法などを用いてからの凝縮沈殿法を使用しておりますが、詳細な説明は主旨ではない判断し解説を省略いたしました。
今回の一番のポイント。処理した水は下水に捨ててる
さて、以上のような流れで汚染水は処理されていたわけですが、今回私が一番驚いたのは、その水の処理です。
図の下側をご覧ください。
豊洲の地下にある水は水道水
この処理を見た時、私はなんとなく浄化した水を地下に戻しているんだなと思っていました。しかし、図にあるように処理した水は下水に流して捨ててしまっているのです。もちろん、汚染物質が取り除かれていることを確認してからです。
しかし汚染水を地上に汲み上げる(揚水といいます)と、地下の水はどんどんなくなっていきます。地盤沈下の原因です。ですから代わりの水を注入するのですが、豊洲で注入されている(復水)のはなんと水道水なのです。
汲み上げた汚染地下水は水処理プラントで処理して下水道に放流し、汲み上げた分に相当する水道水を地下に戻します。
つまりあの広大な豊洲市場の地下にたまった水の何割かは水道水なのです。他にも汚染されていなかった地下水や雨水はあるでしょうが、とんでもない量の水道水が注入されているわけです。いったい水道料金はいくらかかったんでしょう?
日本の水道水の安全性は誰もが知るところだと思います。これははっきり言って最強の汚染水対策でしょう。
ちなみに豊洲の各施設は遮水壁でぐるっと囲っております。各施設は土壌を無視すればちょうどバスタブが水を貯めているような状態です。ここから汚染水を取り除き、水道水を入れているのが現在の豊洲です。
このような状態で地下から人体に有害なレベルの汚染水が湧き出る可能性は、限りなくゼロに等しいのです。
さて汚染水の性質、汚染水処理の仕方ときたのですが、ちょっと方針を変えようかと思っています。もうちょっと全体のことやってほうが良いんじゃないかなと思っています。
そう思った経緯は次回に譲るとして、ご質問なのですが、豊洲移転の何が分かりにくいと感じておりますか?
よろしければ率直にコメントいただけると幸いです。
よろしくお願いします。
お母さんのための社会問題講座~豊洲の汚染水について(1)~
前回までは豊洲の土壌についてのお話でした。
お母さんのための社会問題講座~豊洲の土壌汚染は本当に処理されているの?~ 前編
お母さんのための社会問題講座~豊洲の土壌汚染は本当に処理されているの?~ 後編
そして今回からは汚染水のお話になります。
記事の流れとしては
1)汚染水ってそもそも何だろう?
2)汚染水処理プラントの仕組み
3)汚染水処理工事の概要
4)盛り土と地下ピットの水について
という流れで徐々に視点を広げていく感じの解説を行う予定です。
よろしくお願いします。
汚染水は呪いの水などではない
豊洲市場の地下ピットに水が溜まっていたことについて、各メディアは危機感をあおるようなタイトルで連日大騒ぎをしています。
メディアは汚染水、汚染水と大騒ぎですが、そもそも豊洲で発生する汚染水のとはどのようなもので、どんな性質なのかについて考えたことはありますか?
例えば、東日本大震災で福島第一原発が被災したときも汚染水騒ぎが起きました。あの汚染水は【放射性物質に汚染された水】でした。
しかし、豊洲の水は【ガス工場の廃棄物に汚染された水】です。
豊洲の汚染水は浄化可能な水
【放射性物質に汚染された水】を処理するのはとても大変なことです。何しろノウハウがあまりありませんし、処理したあとの廃棄物をどうするかも難しい問題です。
ですが【ガス工場の廃棄物に汚染された水】というのは、どんな物質によって汚染されているかもわかっていますし、汚染物質が何かが分かっていれば処理する技術もすでに確立されています。そんなに難しい対処ではないということです。
それなのにメディアは汚染水をおどろおどろしく報道しています。
そもそも豊洲では汚染水処理も万全な対策を施しており、人体に影響を及ぼすレベルの汚染水が発生することはあり得ません。
現状で判明している「基準の4割のヒ素」「環境基準いっぱいの0.1㎎のシアン」といった汚染物質の検出は想定の範囲内の数値でしかありません。本来なら汚染水処理が成功していることを報道すべきなのです。
豊洲の汚染水の正体は?
豊洲の地下汚染水がガス工場から由来していることは冒頭で述べました。
具体的には「ベンゼン類」「油類」「シアン化合物」「重金属類」と大まかに分けて4種類(より正確には7種類+1)の汚染物質です。
個々の汚染物質の紹介は前々回で行いましたので、気になる方はもう一度ご参照ください。
これらの汚染物質は、まずは土壌に染み込み、時間をかけて徐々に下へ下へと下っていきます。
図に「不飽和帯」「帯水層」という言葉があるのが分かるでしょうか。
ちょっとここで専門用語の解説になりますが、今後盛り土の話をするときに外せない言葉なので、まずはこの用語の解説からお付き合いください。
不飽和帯
私たちの周囲には空気がありますが、その中に目には見えない水蒸気も混じっていることはご存知だと思います。より身近な言葉でいえば湿気ですね。
同様に土の中にも水蒸気は混じっています。
中学校の理科で習ったと思いますが、水蒸気が水になることを「飽和する」と言います。次に説明する帯水層と違い、地表から帯水層までの浅い土壌のことを「不飽和層」と呼びますが、これは水蒸気がまだ水になっていない土壌という意味です。
帯水層
一方、地中深くになるにしたがい気圧が高まってくるため、気体だった水蒸気はやがて液体である水へと変化します。飽和現象です。
この深さの土壌を、水を帯びている層なので帯水層と言います。
この水はゆっくりと海へと向かって流れています。汚染物質がここまで浸透して到達してしまうと、水の流れに乗って拡散してしまいまい対処が難しくなり、同時に被害も広がります。そこで汚染水対策としてこの帯水層の水を浄化する対策がとられます。
詳細は次回以降に譲りますが、豊洲では水をくみ上げて浄化する方法が採用されています。
汚染物質と水の関係。そして汚染水処理は成功しているのか
地中深くに水を含む土の層があり、そこまで汚染物質が到達してしまうと汚染水になるという一連の流れはご理解いただけたと思います。
それではガス工場から出た汚染物質は水と出会うとどのような状態になるのでしょうか。
ベンゼンと油は水と混合している
水と油が混ざらないことは常識として読者の方もご存知かと思います。またベンゼンも水に溶けにくい性質をしています。
これらの物質が地下水のある場所まで浸透していくと、水には溶けないのですが、先ほど説明したように地下水には流れがあるため、広範囲に押し流されて広がっていくため厄介です。水に溶けない性質を持つため、図では「混合」という風に表現させていただきました。
もし豊洲市場の地下ピットにある水たまりがこれらを含んだ汚染水だとしたらどうなるでしょうか。
「ベンゼン類」なら特有の甘い臭がしますし、「油類」なら水面に浮き出て目視が可能です。ベンゼンはかつて衣類の染み抜きに使われていて各家庭に常備されていたそうなので、臭いを知っている人も多そうです。今のこところそういった類の情報は無いので、少なくともこれらの汚染水ではないと言えそうです。
シアン化合物と重金属は水に溶ける
一方、ガス工場由来の汚染物質のうち、シアン化合物と重金属は水に溶けるという性質があります。目視で判断することは難しいので、これらの汚染水である可能性はなくはないです。実際、不十分な検査ではありますが公明党の調査ではシアンが検出されたとされています。
ただ正規の手順に沿った調査方法ではないため、この計測結果をもってただちに危険だとはとても言い切れません。
理由としてはまず
1)たまたまシアンの濃度が濃い部分の水を汲んでしまったという可能性があります。2)また正規の手順なら水たまりの複数の個所から十分な量の水を汲み取って平均を出さなければなりませんが、それも行われていません。
3)さらに出てきた数値自体も極端に高いというほどでもありません。浄化処理に失敗していたとしたらもっと極端に高い数値が出ないとおかしいのです。
以上の理由から、今のところは地下ピットの水は「汚染除去に失敗した水」とはとても言えないのです。追加の調査結果を待ちましょう。
汚染物質が除去されている以上、汚染水は発生しない
ベンゼン類、油類、シアン化合物、重金属類は、それぞれ土壌汚染の時も浄化が可能でした。
同様に水と一緒の状態でも処理することが可能です。実際にその処理は行われています。
土壌からもすでに汚染物質が取り除かれていますし、汚染水も処理がされているならば、理論上、豊洲の土壌には汚染の原因となる物質が存在しないことになります。
そもそも本来であれば地下ピットに水たまりが出てきたからと言っていちいち大騒ぎする必要はないのです。水は低いところに流れるものなので地下ピットに水がたまるのは当たり前の現象です。特に9月は大雨が降りました。
手抜き工事の可能性はあるか?
もし手抜き工事などで地下汚染水の浄化処理ができていなかったとしたら、それは確かに大問題です。
ただし、豊洲市場の浄化処理工事はかなりの量の情報公開が行われており、情報を一部分だけ改ざんしても他との整合性が採れなくなってしまいます。現場には複数の人間が出入りしていますし、処理後の水質検査もしっかり行われています。
このような状態で手抜きをするとなると、都庁と工事業者全体が示し合わせて嘘をつきとおさなければなりません。現実的には不可能な話です。
さらに言えば工事業者が手抜きをしてどんな利益につながるのでしょうか。その時は何かしらの経費削減はできるかもしれませんが、手抜きが発覚すれば次の仕事がもらえなくなるだけでまるで意味がありません。
以上の理由で、手抜き工事による浄化処理の失敗というのもまず考えられないことです。
地下汚染水の処理は成功している
現在のところ、不十分な水質調査の結果ではありますが、出てくるデータは汚染処理が成功を示すものばかりです。
「基準値の4割のヒ素」「猛毒のシアン」などと仰々しく報道されていますが、前回も説明した通りこれらの物質はすべてごく自然に存在する物質です。
豊洲の場合はガス工場の廃棄物があったため基準を超えた濃度の汚染物質が出ましたが、処理によって基準値以下にまで濃度が低下しています。
何度も言いますが、今まで出てきたデータはどれも汚染水処理の成功を裏付けているデータばかりです。したがって豊洲に汚染水問題は実は発生すらしていないのです。この点にぜひ気を付けてください。
次回は具体的にどのような処理が行われたのかの解説です。
汚染水処理プラントの仕組みと汚染水、処理水、水道水の三つの水がどのように扱われているかのお話になります。
お母さんのための社会問題講座~豊洲の土壌汚染は本当に処理されているの?~ 後編
前編では主に汚染物質の対処法についてを解説いたしました。
汚染物質は大まかに4種類(ベンゼン類、油類、シアン化合物、重金属類)に分類でき、それぞれに適切な対処法を取れば汚染物質は浄化することができるという内容でした。
ところで豊洲の現場では、汚染物質はそれぞれ一か所に固まって存在するのではなく、いくつもの汚染物質がまだらに混在している状態です。
それらをどう処理していったらよいかが今回の内容になります。どうぞよろしくお願いします。
どんな処理方法を採用したのか?
まずは今回の土壌汚染対策に採用された3つの方法を解説します。汚染水の対策については次回にやる予定なので今回は触れません。
なお、写真は全て東京都中央卸売市場からの転載となります。
掘削微生物処理
汚染された土壌を掘り起こし、仮設テントのある場所に運び込み、畝(うね)を作ります。土中にいるベンゼンを分解する微生物を助けるため、餌(栄養塩)と空気を送り込みます。
ベンゼンは揮発しやすい性質があるので、空気を送り込むことによってベンゼンが空中へと飛散することがあります。そこで仮設テントに活性炭を設置し空中に広がったベンゼンを吸収します。
②中温加熱処理
土壌が油によって汚染されている場合は【加熱】して油を気化して飛ばしてしまいます。洗濯で脂汚れを取るためにぬるま湯を使うのと発想は一緒です。
この方法だと、ベンゼンも気化して飛ばすことができるため同時に処理をすることが可能です。
③洗浄処理
シアン化合物や重金属は水に溶ける性質があります。ですから土壌を洗ってしまえばこの2つの汚染物質を取り除くことが可能です。(重金属は溶けないというコメントをいただきましたが、おっちゃんこさんの解説の通りに水に溶けます)
そこでこれらで汚染されている土壌を、水ですすぎながら目の粗さの違う"ふるい”でふるい分けをし、石、砂利、砂、泥と分けていき汚染物質を洗い流していきます。
最終的に、砂と泥の状態になった泥水のうち、泥はセメント資材などとし、砂は界面活性剤(洗剤)と混ぜて洗い、汚染物質だけを浮かせて取り除きます。こうしてきれいな土だけが残るわけです。
お米を研いであくを捨てるという工程をイメージすると分かりやすいです。
掘削微生物処理と、中温加熱処理や洗浄処理との組み合わせ
実際にはこれら3つの処理方法を組み合わせて土壌を処理していきます。
土壌によって汚染されている物質はそれぞれ異なるので、ケースごとに確認していきます。ちょっとややこしいのでもう一度図を置いておきますね。
汚染ケース1(ベンゼン類のみの場合)
この場合は「掘削微生物処理」によって対応します。これだけで処理は終了です。
汚染ケース2&3(ベンゼン類、シアン化合物、重金属類の場合)
ベンゼンのほかにシアン化合物、重金属類によって土壌が汚染されている場合はベンゼンの濃度によって2パターンの対処法があります。
◆汚染ケース2
ベンゼンが環境基準の30倍より上だった場合(高濃度)は、まずベンゼンを「掘削微生物処理」によって分解します。その後、シアン化合物、重金属を洗い流すために洗浄処理に回します。
◆汚染ケース3
ベンゼンが環境基準の30倍以下の場合(低濃度)は、そのまま「洗浄処理」に回してしまいます。洗浄処理でもある程度のベンゼンを取り除くことは可能のようです。またこの場合でも洗浄処理施設はテントの中にあるため、気化したベンゼンを回収することが可能なので問題ありません。
汚染ケース5(ベンゼン類と油類の場合)
汚染ケース4を飛ばして先に5の解説です。
ベンゼンと油類によって土壌が汚染されている場合は「中温加熱処理」によって対応していきます。400℃~600℃の熱で加熱することでベンゼンも油も気化して飛んでしまうので残った土はきれいな状態となります。
汚染ケース4(ベンゼン類、油類、シアン化合物、重金属類の場合)
全パターンの中で一番最悪なケースですが、この場合は「中温加熱処理」でベンゼンと油を取り除き、次に「洗浄処理」によってシアン化合物と重金属を取り除きます。この場合でも時間と手間はかかりますがすべての物質を取り除くことが可能です。
動画でも確認できます
東京中央卸売市場のHPには、実際に行われた処理の様子が動画でアップロードされています。大変にわかりやすいのでぜひご覧ください。
ここまでお読みなった方なら、以下のリーフレットもよくご理解いただけると思います。今回の図解はこのリーフレットの中の図のほぼ丸写しになってしまいました。
「豊洲新市場 土壌汚染対策工事の概要」
http://www.shijou.metro.tokyo.jp/toyosu/pdf/outline/images/pamphlet.pdf
今回、たくさんの処理方法の名前や実際の工程などを紹介しましたが、これらをいちいち覚える必要はありません。
豊洲ではそれぞれの汚染土壌の特性に合わせ、場合によっては2段階の処理をして清浄な土壌に戻した、ということだけ抑えていただければ時に問題はないかと思います。とても入念で適切な対応だと思います。
工事関係者はすごいという余談
今回の土壌の浄化は、 はっきりいって土をどこかの山から持ってきて入れ替える方がずっと楽だったんじゃないかと思うくらいの大工事です。
しかし土壌汚染をこのようにして解決できたということは今後、大きな財産となることは疑いようもなく、関係者の努力は称賛してしかるべき行為だと思います。
実際、ほぼその場で土を洗って入れ替えたようなもので、これはとてつもなくすごいことですよ。
豊洲の土壌ってどれくらい範囲で浄化されているの?
今回はこれで最後になります。
土壌を浄化するやり方は分かりましたが、実際、豊洲ではどれくらいの体積の土壌がこれらの方法で処理されたのでしょうか?
よく報道では地表から2メートルまで掘ったと言われていますが、厳密にはこれは間違いです。「荒川工事基準面から2メートル上まで掘った」という表現が正しく、今回の盛り土騒動のときに解説していくれた大貫剛さんはこのように言っています。
まずこの図で重要なのは「AP+2.0m」ということろで、これは荒川工事基準面より2m上、つまり大雑把に言えば「海面より2m上」という意味。ここまで地面を掘り下げて汚染土を除去した後、砕石を敷いている。
— 大貫剛 (@ohnuki_tsuyoshi) 2016年9月10日
盛り土問題の解説は次回に譲るとして、豊洲市場の土壌は大雑把に言って「海面より2m上」まで平らに掘り下げられ、そこからさらに「汚染土壌を掘りあげて処理を施して戻し」次にそこに地下水が上ってこないように砕石を敷き詰め、その後4,5mの安全な土壌を盛りなおしてあります。
イメージが湧かないでしょうか?
いつも通り身近なイメージで考えましょう。
2段の海苔弁当を想像してください。このお弁当は失敗作で、1段目のところどころにしか醤油がかかっていません。
そこで2段目のご飯を掘り起こし、醤油のかかっている部分を取り除き、空いた部分に白いご飯を詰め、さらに海苔をかぶせたあと2段目の白いご飯をかぶせました。
醤油はどこにもかかっていません。海苔弁当としては味も素っ気もない完全な失敗作に生まれ変わりました。
豊洲市場の周囲にある土壌は、この2段目の真っ白なご飯4.5mです。砕石が海苔です。建物の下にある土壌も醤油の残っていない真っ白なご飯です。どこにも醤油がかかっていないのに、どうして醤油が染み出てくるのでしょうか?
「豊洲はどうあがいても安全」という妙な表現で今回の記事を締めさせていただきます。
今回の記事を書くにあたり、ひもたろう (@himotarou) | Twitterさんには化学知識の件でご意見をいただき大変に助かりました。ここに感謝を念を述べさせていただきます。
次回は汚染水と盛り土の解説をやる予定です。
追記)使用している図は商用に利用しない限りはご自由にお使いになって構いません。出典は明記していただけるとありがたいです。
図解はそれを指示しながら話しているだけで原稿もなしにプレゼンテーションができてしまう面白ツールです。学校の先生などは朝礼の話題にぴったりですよ。
またパワーポイントでデータが欲しい場合はツイッターなどからお気軽にご連絡ください。
お母さんのための社会問題講座~豊洲の土壌汚染は本当に処理されているの?~ 前編
豊洲の移転問題において、建物の下に盛り土がなされておらず、空洞になっていた件で小池都知事が緊急会見を開き、移転問題がさらに深刻化している様相です。
このニュースを受けて山本一郎さんなどは「小池都知事のヒステリー」などと揶揄交じりの記事をアップしています。
山本一郎さんの記事におおむね問題点は書かれているのですが、私なりにこの件の要点を挙げると
1)建築工法としては空洞の状態で問題ない。
2)それなのに小池知事は(おそらく)部下に説明を求める前に記者会見を開いた
3)小池知事の勇み足?
ということになるでしょうか。
小池都知事もある面ではただのオバサン
この話を知ったとき、ふと思い出したのは築地で働く生田よしかつさんのこのツイートでした。
情報公開ってさぁ…こないだ魚河岸ン中の喫茶店でオバサンが「ひどいよねぇ都は!アタシ達には何にも知らせないンだから」って言うから「豊洲市場のHPに書いてあったよ。見た?」と言ったら「そんなヒマないンだよ!アタシャ忙しいンだ!」とコーヒーを飲んでた。かくも情報公開とは難しいモンだ。
— 生田よしかつ (@ikutayoshikatsu) 2016年9月1日
このオバサンたちに比べれば、小池都知事の方が知識や理解力、判断力では上だと思われます。なにしろ芦屋のお嬢様からカイロ大学を首席で卒業し、さらに閣僚経験まであるエリートですし。
しかし小池知事の経歴を見ても、建築に関する知識についてはあまり造詣が深くなさそうですし、ある面では小池知事も年齢相応のオバサン並みの知識しかないはずです。
また、小池知事はこのオバサンたちによって選挙で選ばれた存在です。
今回の小池知事の行動は、私の目からしても行政の首長としての行動として適切かどうか疑問を覚えるのですが、それでも、ある意味民意の反映と言うこともできます。
建築工学など薬にもしたくないオバサンからすれば「盛り土がないって知事が言ってた! きっと豊洲は危険に違いない!」などと思っても不思議ではないと思います。メディアも不正確な情報で危険を煽っています。
豊洲移転へのカギはこのオバサンたちがきちんと事実を理解することなのかもしれません。
前置きが長くなりましたが、今回は以上のような理由から「お父さんのためのワイドショー講座」ならぬ「お母さんのための社会問題講座」をやることにしました。
なお、今回はこちらのサイトの解説を主に参考にさせていただいております。
移転先(豊洲)の汚染除去の実態1 - ottyankoの日記
移転先(豊洲)の汚染除去の実態2 - ottyankoの日記
豊洲の土壌汚染って本当に処理されているの?
さて、お母さんたちの一番の関心事はやはり「食の安全」ではないでしょうか?
家族の口に入るものが、危険なのかどうかはとても心配だと思われます。
メディアでは豊洲の土地が汚染されていると口やかましく言いますが、どんな物質で汚染され、どのような方法で処理されているか、一度確認してみませんか?
豊洲の汚染物質は大まかに4種類に分類できる。ガス精製の副産物。
豊洲は市場が移転する前は東京ガスのガス製造工場でした。このガスを作る際にどうしても有害物質が副生されてしまいます。このガス工場は閉鎖され現在は撤去されているのですが、有害物質は土壌に残ってしまいました。
それが大まかに言って以下の4種類です。
・ベンゼン類
・油類
・シアン化合物
・重金属類
それぞれを解説していきましょう。
ベンゼン類
ベンゼンは炭素を豊富に含む物質が不完全燃焼するときに発生する物質です。揮発性が高いため、現在もいたるところに浮遊しています。たとえばタバコの煙の中にも含まれますし、排気ガスにも含まれます。
発がん性があると言われいますが、そこらじゅうに浮遊しているので、この日本においてベンゼンを吸っていない人間はおそらくいません。現在、豊洲の大気中のベンゼンの濃度は環境基準を下回っており、おおむね安全と言えます。
油類
ひもたろうさんに解説いただいたところ、重油類やベンゾピレンなどのことだそうです。油については解説は不要でしょう。食用油以外の油を口にしたくはないですよね。
シアン化合物
シアン化合物はすごく単純に言って、毒です。
例えばシアン化カリウムは推理小説などでお馴染みの青酸カリのことです。とても危険な物質ですが、水に溶けやすいという性質があり、水で洗い流すことが可能です。
※ひもたろうさんからシアン化水素は沸点が常温付近で気化するというお話をいただきました。ただ実際の処理としてはやはり水に溶かして除去なので処理手順に変わりはないようです。
重金属類
鉛、ヒ素、水銀、六価クロムなどよく公害問題などで耳にする物質です。これも地下水に溶け、徐々に移動していく性質があり土壌汚染の原因です。ですが、そもそもこれらの物質も自然界に微量に存在している物質です。問題は一度に摂取する量なのです。
4つの有害物質はどう処理すれば良い?
以上の大まかに言って4種類の有害物質が豊洲の土壌から発見されました。確かに何も対策を打たずに豊洲に食品市場を作ることは危険です。
ですが、専門家が協議を重ねて対策をした結果、これら全てを取り除くことに成功しています。その処理方法は大きく分けて3つです。
微生物処理
ベンゼンは微生物によって分解処理することが可能です。
具体的な処理としては土の中にあるベンゼンを微生物に分解してもらうため、土を掘り起こし、餌を与えたり空気を送ったりして微生物が働きやすい環境を作り微生物に頑張ってもらいます。考え方はお酒を造ったり、腐葉土を作ったりするのと一緒です。
加熱処理
油は熱に弱いため、加熱することによって土壌と分離することが可能です。
身近な例で例えるならばお酒を使った料理でアルコールを飛ばすようなものです。和食の「煮切り」では加熱によって煮物の中からアルコール分だけを飛ばしますが、それと同様に油で汚染された土壌を加熱すると土と油を分離することができます。
@zukaiseiri 加熱処理は煮切りでもありますが、熱分解でもあります。500℃程度の温度で化学変化を起こし分解されるもの(例えばベンゼンは発火点が498℃)にも有効です。熱することで処理可能と簡単に書いてしまって良いかと(;・∀・)
— ひもたろう (@himotarou) 2016年9月13日
とまあ、ちょっと一言では言い切れないみたいですが、加熱することで汚染物質と土壌を分離することが可能です。
水洗処理
シアン化合物や重金属は水に溶けるという特徴があります。そのため、土を細かくふるいにかけながら洗浄することを繰り返すことで、これらの有害物質を取り除くことができます。
身も蓋もないたとえをするならば洗濯機のすすぎ機能です。
洗濯機のすすぎで洗剤が完璧に落ちることはありませんが、誰もそれを気にしたりはしませんよね。実際の豊洲での土壌汚染ではもっと細かなすすぎ工程を繰り返し、汚染物質と安全な土とに分離しています。
洗浄が終わった土壌はシアン化合物も重金属も「無い」と断言して良いレベルだと思われます。
実際に豊洲で行われた土壌処理では、汚染された物質の種類によってこれらの処理を組み合わせ、徹底的な土壌改善を行っています。その解説は後編にて詳しくお伝えします。
この手の化学的な話なるとどうしてもなじみのない単語が飛び交い、理解するのが難しくなりますが、使われている手法はどれも私たちにとってなじみの深い方法ですし、それだけに、その効果の高さもお母さんなら肌感覚で知っていることでしょう。
4種類の汚染物質によって対応は異なりますがこれらの方法を駆使すれば安全に、そして確実に汚染物質を取り除くことが可能です。
シアン化化合物は主食にさえ含まれている。過剰に恐れることはない
そもそもこれらの汚染物質はどれもごく自然に存在しているものですし、完全に無くすことは不可能です。
自然に存在しているものですので、微量ならば摂取しても問題ありません。たとえば先ほど毒と言い切ったシアン化化合物ですら身近な例ではアーモンドに含まれていますし、タピオカの原料であるキャッサバにも含まれています。キャッサバは一部の地域では主食として扱われています。毒抜きをして食用にしているのです。
大気中からベンゼンが検出されるのも当然のことです。築地や豊洲近辺で排気ガスが漂っていない場所などあり得ません。
メディアの大げさな報道には惑わされず、これらの汚染物質の数値が基準以下なのかどうかで判断をすることが肝心なのです。
後半では、具体的に豊洲ではどのように処理が行われたのかについてを解説します。
どうぞよろしくお願いします。
おときた都議は紙の上でも早口だったみたい~都政レポートを図解してみた~
前回の築地の図解は、思いもかけずたくさんの人に閲覧いただきました。読んでいただいた方、リツイートしていただいた方、本当にありがとうございました。
当初はあまり反響がなくて「まあ、こんなものかな」と思っていたのですが、偶然、前回の記事でも取り上げたおときた駿都議のツイートにコメントしたことがきっかけで広まっていったような気がいたします。
余談ですが、私がコールドチェーンやドライキッチンに言及するのは、割と長い間飲食店で働いていた経験が元になっています。実際問題、この二つを守るためにどれだけ苦労したことか。それを軽く扱われるとついかっとなってしまうみたいです。この感情的になるとガンガン行ってしまう性格は直したいなと常々思ってます。ただ、先祖代々こんな感じらしいので、はてさて。
おときた都議は紙の上でも早口でした。
そんなわけでお世話になった(?)おときた都議ですが、早口を直したいと常々おっしゃっています。
そのおときた議員のサイトを眺めていたとき、ふと目にした「政策レポート」のリンクを見つけて思わず吹き出しました。
……字ばっか!
これ以前の政策レポートには斉藤りえ北区区議との合同のものもあるのですが、見比べると密度が一目瞭然。
おときた議員は紙の上でも早口だったようです。
北区はおときた議員がいると気温が上がりそうですね
もちろん、ダメだというわけじゃないですよ。
いやあ、なんか、らしいなと噴き出してしまいまして。言いたいことがたくさんあるんだという熱意はすごく感じます。
さすがに長年ブロガーをやっていらっしゃるだけあって、わかりやすい良い文章です。ただ、これはおときた議員を知っているから読む気になるのであって、たとえば政治のことをあまり知らない高校生とかが読むには厳しいんじゃないかなと思います。
こういうときこそ図解の出番ではないでしょうか。
そういうわけで「都政レポート2016年 第1号(2016年3月〜)」を図解してみました。
(最新の都政レポートってネットには上がってないですよね?)
最近、言い争いのあるテーマばかり追っていたので、なんかほっこりしたんですよね。
「23区格差」という本で北区はDランク評価だったらしいですよ
このレポートでは「23区格差」という本を読んで衝撃を受けたことから記事が始まっています。北区は最低のDランクだったと。
この本の統計データからおときた議員は北区の課題とその解決策を解説しています。
おときた議員によると北区は意外と生活環境は良いらしいです。なにより都内への交通アクセスが良く、子育て支援も充実、図書館などの文化施設もそろっているようです。自分は赤羽にしか行ったことがなかったので、少々以外でした。確かに住むにはよさそうです。
しかし実際には人口増加率が23区中最下位。
「23区格差」のデータから示唆されたその原因は、老朽化した建物が多いこと、民間借家の平均面積が23区中20位と、子育て・ファミリー世帯が入居できる住宅環境が極めて少ないからではないかとおときた議員は読み解きます。
実際、人口動態も幼児人口は増加しているのに、小・中学生になると激減、またその親世代であろう30~44歳までの人口割合が少ないようです。
「働き盛り世代が快適な住環境を求めて転居してしまう」ことが北区の課題だとおときた議員は考えているようです。
そして、この流れを断ち切らないといけない、と以下の三つの対策を挙げて記事を終えています。
・王子・十条駅前などを中心とした再開発事業
・シルバー人材センターの登録率の向上
・新たな地域事業の創生
都政レポートを大まかにまとめるとこんな感じでしょうか。
図を使って考えよう
普段は解説のためにもっぱら図を活用している当ブログですが、図は考えるときの道具にもなります。これを「図考」と言います。ちなみに私が適当に作った造語じゃないですよ。
解決策の詳細を知りたい
まず、統計データから読み解いた「働き盛り世代が快適な住環境を求めて転居してしまう」という推論まではなるほどなと納得できます。
その人々に対して、再開発をすることで転居の流れを止めるというのは納得できますが、シルバー人材センターの登録率の向上や地域事業の創生というのは「転居の引き止め」にどう役に立つのかが今一つイメージができません。
シルバー人材センターは高齢化の文脈のフォローかなとも思うのですが、この文章だけだと住宅環境の改善にも役立てるように読めます。
また地域事業の創生と「転居の引き止め」もぱっと結び付きません。家が手狭になるから引っ越すのと、地域事業がどう結びつくのでしょうか。むろん、地域が活性化されればマンションなどの建築も活発になるのでしょうが、それのことでしょうか?
このあたりはいかにも「紙面が尽きました」という感じで無理やり言葉を詰め込んでいる印象もありますし、別に私はおときた議員の文章の添削をしたいわけでもありません。ただちょっともったいないですよね。
北区って独身世帯多いの?
また個人的に興味深く思ったのは、北区の民間借家の平均面積が小さいという点です。これは戸建てではなくアパートのような集合住宅も含んだ数字なのでしょうか? もしそうなら北区には1ルームマンションのような若者向けの住宅が多いということなのかもしれません。都内の割に家賃もそこそこな気がしますし。
この人々は、働き盛り世代で子供が大きくなって家が手狭になると引っ越す予備軍になる人々ではないかと予想されます。
なぜなら北区に実家がある人はなかなか離れることが難しいですが、1ルームに暮らしていたような人は地方から上京してきた人などが多いでしょうし、そうなれば転居にも抵抗がなさそうです。
となれば、この人々に早いうちからアプローチをし、子育てに使えそうな空き家情報の提供や、リフォームに関する補助金情報を届けられれば、転居を引き留められるかもしれませんね。
むしろ北区で結婚をプロデュースし、そのときに人生設計の資料を渡せば効率がいいかもしれません。女性にもてるために政治家になったと豪語するおときた議員なら、面白い合コンを企画してくれるでしょう。
そして「母になるなら流山」のように「都内だと北区が子育てにはいいよ」という風になれば、転居を引き留めるどころか、転入すら期待できるのではないでしょうか。
以上は図を眺めていて私が勝手に考えてみたことです。
「働き世代で、家が手狭になって転居する人々」がキーになっているならば、この人々の属性は詳しく調査しても良いかなとそう思います。
みなさんも図を使って考えてみて!
図は物事を簡略して表現したものなので、図の中にある言葉はすべてキーワードです。それらを眺めているうちに誰でも色々な疑問やアイデアが沸いてきます。
ここで面白いのは、人によって思いつくことが違うということです。
面白いアイデアがあったらおときた議員に提案し、議論をしてみると喜ばれるときっと思います。
おときた議員のことを調べていくうちに政治家ってなんだろうなと今更ながら考え始めたので、もしかしたらおときた議員特集は続くかもしれません。
埼玉県民としてとても親近感を持ってます、頑張ってください!
豊洲がどうのこうのという前に築地を使い続けるのは大問題! 図解でわかる築地市場の問題点(後編)
前回の記事では主に建築物としての面から築地市場がいかにリスキーな建物であるかを指摘させていただきました。
余談ですが、リスクという言葉の本来の意味は「将来への不確実性」だと金融工学の先生が言っておりました。つまり何が起こるか分からないという意味だと。その意味で、築地は大変に建築物として実にリスキーです。
築地市場は不衛生
それに対して衛生問題の面ではリスキーなどという言葉では表現しきれません。関係者の方々、本当に申し訳ありませんが言わせていただきます。
築地市場は衛生面で問題がありすぎです。
開放性施設であること
多くの飲食店でドアが二重になっている理由をご存知ですか?
あれを風除室といい、風が吹き込んでほこりが店内に入らないようにする衛生のための設備です。(ほかにも店内の温度を保つ役割など複数の役割があります)
当然ですが、飲食物にほこりがつくのは衛生的に良くないことです。
しかし築地市場の写真を見てもらえばわかる通り、築地市場は屋外と屋内を仕切る壁がありません。
そのため、ほこりどころか、直射日光、風雨、そして野生動物など衛生的に良くないものが自由に出入りできてしまいます。
東京卸売市場HPの「新市場Q&A なるほど納得!築地市場移転」では築地市場の構造的な問題を以下のように解説しています。豊洲の説明は、読みかえれば築地ではそれができていないという指摘です。
Q
豊洲新市場における品質・衛生管理について詳しく教えてください。
考えてみてください。普段利用するスーパーがテントのような構造で、風を遮るものは何もなく、商品に直射日光や風雨が当たり、店の端っこには野生動物が駆け回っている。そんな場所で食品を買いますか?
老朽化の問題
不衛生さにさらに拍車をかけるのは、築地市場の建物が老朽化しているという事実です。
まず驚いたことに、築地には空調設備がありません。どんなに氷で魚を冷やしておいたとしても、やはり施設全体が冷えていたほうが良いのは当たり前です。
そこから約30年超古い施設のままでスッタモンダした。その間世間の衛生基準はどんどん上がり築地市場は取り残されつつあった。それに驚くことなかれ築地市場には空調がない。このクソ熱い夏でも常温の施設で生鮮食料品の取引をしている。海外の衛生基準は厳しい。当然築地市場の施設では輸出は無理。
— 生田よしかつ (@ikutayoshikatsu) 2016年8月2日
さらに問題は雨漏りです。こちらも先ほど引用させていただいた生田よしかつさんが衝撃的な映像をツイッターにあげてくれていました。
今朝の豪雨時の築地市場仲卸売り場の様子。ちなみに雨漏り(雨降り?w)してたのはここだけじゃねぇよ。早く移転したい。 pic.twitter.com/VnVinHvVOr
— 生田よしかつ (@ikutayoshikatsu) 2016年8月20日
屋根から伝って流れ落ちた雨が清潔なはずがありません。目に見えなくても、雨は周囲に飛散しています。食品に直接触れなくとも外箱や発泡スチロールには掛かります。それを触った手が食物に触れるのでは、梱包の意味がありません。
築地市場の施設状況では、現代的な食品衛生の基準が守れるはずがないのです。
排気ガスには豊洲で問題になっているベンゼンだって含まれている
それに加えて、築地市場ではあの有名なターレを含めた多くのガソリン車が通行しています。当然、車からは排気ガスが出ます。(もっともターレはだいぶ電動化が進んでいるそうです)少し前の資料ですが、築地の一部は交差点なみの排気ガスの濃度だっという調査もありました。
築地関係者もこの排気ガスの問題にはきちんと取り組んでくれているいるわけですが、それでもやはり車が通る以上、排気ガスは避けられません。何度もスーパーを例に例えて申し訳ありませんが、ガソリン車がスーパーの店内を走っていたら衛生的のはずがないですよね。
水たまりは仕方ないで済まさないでほしい
今回、この記事を書くことにした一番の動機がここです。
豊洲の移転の話で、豊洲では海水で床を流せないから蚊やボウフラが沸く、という話を何度も目にしました。
衛生面を気にするなら、そもそも床に水たまりなんかを作らないでほしい、というのが本音です。ちなみに熱帯にあるシンガポールでは水たまりを放置すると罰金刑に処せられます。そこから蚊がわいて疫病の原因になるからです。
確かに魚を扱うときには水が必要になるというのは理解できます。
特に魚は生ものですし、そういう類のものが寄ってきやすいというのもわかります。
床が濡れるのは仕方ないことでしょう。
ですが、消費者に直接目に触れないからといって、床がそんなに不衛生な状態になっているのを放置して良いのでしょうか。海水を撒いておけば安心と古い知識で自己完結してはいけないのではないでしょうか。
そもそも食品衛生において、床は常に乾燥状態にさせなくてはいけないものなのです。こんなことはそこいらの牛丼屋のアルバイトですら知っています。なぜなら私がアルバイトの時に知った知識だからです。(もっとも別に食品衛生の講義を大学で受けたこともあります)
ボウフラは乾燥した場所では生きていられません。同様に食中毒の原因となる細菌の発生も抑えられえますし、悪臭も抑えられます。ネズミやゴキブリなどの野生動物も湿ったところを好む性質があるので近寄りにくくなります。
床は清掃しているとき以外は常に乾燥している状態が理想(というか当たり前)なのです。
この一例を取っただけでも築地の衛生観念推して知るべしなのです。
築地の食品は衛生状態を悪くする環境に囲まれている
以上のように、築地市場は施設としての衛生管理がまったくなっていません。もちろん、築地の方々はそれぞれに衛生状態に気を配ってくれていると思います。
ですが、いかに個人の方が気を付けようとも環境そのものが不衛生では意味がないのです。そして築地から運ばれた先でどんなに衛生管理を徹底したとしても、そもそも大元の築地が衛生的でないならその努力が無駄になってしまうのです。
正直、今回私も調べるまで、築地がこのような状態だとは思いもしませんでした。
また海水の例に見て取れるように、築地市場で働く方々が、衛生観念が無いとは言わないにしろ、かなり偏った知識、あるいは時代遅れの知識のままでいるということもわかりました。
「食の安全」というのは築地市場の移転問題において重要な要素の一つでしょう。特に我々日本人は「食の安全」に敏感です。
前回宣言した通り、この記事では豊洲移転に関わる意見は言いませんが「食の安全」を理由に移転を反対するなら、移転反対をしている業者は即刻築地での営業を停止しなくてはいけないことになります。
この件に対する移転反対派の意見をぜひお待ちしております。
(※補足)
築地で使用されている海水は濾過されたもので、海の水をそのまま撒いているわけではなくその点では衛生面での問題は無いと思われます。誤解している方がけっこういるようなので補足です。
ちなみに移転先の豊洲で海水が使用できないことを煽るメディアがたくさん見受けられましたが、食品衛生の基礎すらまともに勉強していないか、あるいは知っていて無視しているかの2つに1つだろうなと思います。きちんと浄水処理され、消毒されている水道水のほうがどう考えたって衛生的ですよ。