宰相ミッターマイヤーの業績
前回はミッターマイヤーが政治の舞台に足を踏み入れざるを得なかったのではないかと書きました。
今回は、それでは宰相ミッターマイヤーは何をしたのだろうかということを書いてみます。
注記)宰相と書いていますが、これは比喩的な表現で、実際の彼の地位を表すものではありません。政治の主導的な立場に就くことは間違いないので「宰相」と表現します。
1、軍縮
どう考えてもミッターマイヤー最大の仕事はこれです。
というのもラインハルトが無制限に軍を拡大している可能性があるので、これをなんとかしないといけません。
ラインハルトが軍拡を目指した理由は、同盟側を支配下に置くためなので、相応の理由はあります。しかし統一を果たし、ユリアンたち最後の抵抗者もなくなった以上、軍を保持しておく理由はありません。戦わない軍隊はとんでもない無駄飯ぐらいですから。
ここら辺はどうにも不明なのですが、ラグナロック作戦の勝利後、ラインハルトは軍隊を一度解散しているのでしょうか?
さすがに一部は解散していると思われますが、その後もラインハルトが兵員募集を行わず、かなり素早く兵員を移動させているところを見ると、かなりを残しているような気がします。(それにしても、この時代の軍隊はあっという間に組織されますね)
そのうえガリガリ戦争してますからカール・ブラッケが愚痴るのも無理ないです。
それでもまだ財政上に余裕があったというんだから、没収した貴族財産って、国政の何年分に当たるんでしょうねって話です。ほんとその予算を建設に回せと言いたい気持ちがよく分かる。
宰相ミッターマイヤーの時代になれば、組織的な抵抗勢力は壊滅しているわけですから、軍を縮小するのは当然のことです。ほおっておくと彼らが抵抗勢力になりかねません。
前回、ヒルダやマーリンドルフ伯の発言が七元帥に受け入れられないという可能性についてちらっと言及しましたが、主に、この問題を想定しての記述でした。
おそらく七元帥全員が軍縮そのものには賛成するでしょう。
しかしどこからどうゆうふうに削減するかで揉めることは疑いようもありません。彼ら自身がいかに理性的で有能な人物だとしても部下の首を切る作業なわけですし、軍団の縮小は発言力の低下でもありますから一筋縄ではいきません。
これらをまとめあげられれるのはミッターマイヤーしかいません。
2、人事刷新
軍縮した結果として、人事を入れ替えるわけですが、これをどうするかは大いなる問題です。物語終了時、ポストに空きがけっこうできてますしね。
面白い問題なので、これは次回に回します。
3、首都建設
ラインハルトはフェザーンに遷都しましたが、肝心の担当者シルヴァーベルヒはテロで暗殺され、グルックは頑張っているでしょうが創造的な面では及びません。
シルヴァーベルヒは青写真くらいは残したでしょうが、首都建設は国家の一大事業であると同時に最大の難事です。基本的に政治的・経済的教養は無いミッターマイヤーには荷の重すぎる課題といえます。
実はこの課題を片付ける適任者が一人だけ作中にいます。
それはアレックス・キャゼルヌです。彼の行政能力、組織運営能力は作中でも随一のように描かれています。特にイゼルローンでの行政ですが、帝国では軍事基地としての側面ばかり描かれていましたが、キャゼルヌ就任後は、まるで一つの都市のように運営されるようになっていました。
もちろん、元々イゼルローンは都市としての機能が存在していたのでしょうが、利用された描写がありません。またヤンがイゼルローンを陥落させた時に民間人の描写がなかったところを見ると、都市としての運用は期待されていたが、実際はあまり使われていなかった可能性があります。
キャゼルヌはイゼルローン赴任後、早い段階で都市機能を有効化させています。行政官として、天才的な手腕を持っていることは疑いありません。
おそらく物語終了後、キャゼルヌはハイネセンに戻ったならば行政の関係者となることが予想されます。その活躍は宰相となったミッターマイヤーの耳にも届くでしょう。
最後まで帝国に立ち向かった人物ですから、公的な地位は厳しいでしょうが、オブザーバーとして関与させることは可能です。
問題は、キャゼルヌ自身があまり関与したがらない可能性が高いことです。
三顧の礼を持って尽くす、搦手にユリアンを使う、作中最強の奥さんを篭絡するくらいしか手はないですね。
4、航路設計と植民地建設
ミッターマイヤーが最も業績を上げそうな仕事がこちらです。
帝国と同盟がひとつになったことにより、今まで紛争地域のすぐそばで人が住むことのできなかった場所や、今まで辺境とされてきた先の宙域への植民活動が盛んになることが予想されます。
特に軍縮で退役した軍人などはさかんに植民に参加するでしょう。
ミッターマイヤーは歴史書にも彼ほど長い距離を踏破した人間は居ないといわれるほどあちこちに行った人物ですから、航路の設計にはうってつけの人材です。
また先程も言及しましたが、技術を持ち、新体壮健な退役軍人は植民活動へうってつけの人材なので、積極的に植民活動へ参加させるでしょう。
このあたりはミッターマイヤーも政治に参加できて良かったなと思うのではないかと思われます。