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お母さんのための社会問題講座~豊洲の土壌汚染は本当に処理されているの?~ 前編

豊洲の移転問題において、建物の下に盛り土がなされておらず、空洞になっていた件で小池都知事が緊急会見を開き、移転問題がさらに深刻化している様相です。

www.jiji.com

このニュースを受けて山本一郎さんなどは「小池都知事のヒステリー」などと揶揄交じりの記事をアップしています。

bylines.news.yahoo.co.jp

山本一郎さんの記事におおむね問題点は書かれているのですが、私なりにこの件の要点を挙げると

1)建築工法としては空洞の状態で問題ない。

2)それなのに小池知事は(おそらく)部下に説明を求める前に記者会見を開いた

3)小池知事の勇み足?

ということになるでしょうか。

小池都知事もある面ではただのオバサン

この話を知ったとき、ふと思い出したのは築地で働く生田よしかつさんのこのツイートでした。

 

 このオバサンたちに比べれば、小池都知事の方が知識や理解力、判断力では上だと思われます。なにしろ芦屋のお嬢様からカイロ大学を首席で卒業し、さらに閣僚経験まであるエリートですし。

しかし小池知事の経歴を見ても、建築に関する知識についてはあまり造詣が深くなさそうですし、ある面では小池知事も年齢相応のオバサン並みの知識しかないはずです。

また、小池知事はこのオバサンたちによって選挙で選ばれた存在です。

今回の小池知事の行動は、私の目からしても行政の首長としての行動として適切かどうか疑問を覚えるのですが、それでも、ある意味民意の反映と言うこともできます。

 

建築工学など薬にもしたくないオバサンからすれば「盛り土がないって知事が言ってた! きっと豊洲は危険に違いない!」などと思っても不思議ではないと思います。メディアも不正確な情報で危険を煽っています。

豊洲移転へのカギはこのオバサンたちがきちんと事実を理解することなのかもしれません。

 

前置きが長くなりましたが、今回は以上のような理由から「お父さんのためのワイドショー講座」ならぬ「お母さんのための社会問題講座」をやることにしました。

なお、今回はこちらのサイトの解説を主に参考にさせていただいております。

移転先(豊洲)の汚染除去の実態1 - ottyankoの日記

移転先(豊洲)の汚染除去の実態2 - ottyankoの日記

豊洲の土壌汚染って本当に処理されているの?

さて、お母さんたちの一番の関心事はやはり「食の安全」ではないでしょうか?

家族の口に入るものが、危険なのかどうかはとても心配だと思われます。

メディアでは豊洲の土地が汚染されていると口やかましく言いますが、どんな物質で汚染され、どのような方法で処理されているか、一度確認してみませんか?

豊洲の汚染物質は大まかに4種類に分類できる。ガス精製の副産物。

豊洲は市場が移転する前は東京ガスのガス製造工場でした。このガスを作る際にどうしても有害物質が副生されてしまいます。このガス工場は閉鎖され現在は撤去されているのですが、有害物質は土壌に残ってしまいました。

それが大まかに言って以下の4種類です。

ベンゼン

・油類

・シアン化合物

・重金属類

それぞれを解説していきましょう。

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ベンゼン

ベンゼンは炭素を豊富に含む物質が不完全燃焼するときに発生する物質です。揮発性が高いため、現在もいたるところに浮遊しています。たとえばタバコの煙の中にも含まれますし、排気ガスにも含まれます。

発がん性があると言われいますが、そこらじゅうに浮遊しているので、この日本においてベンゼンを吸っていない人間はおそらくいません。現在、豊洲の大気中のベンゼンの濃度は環境基準を下回っており、おおむね安全と言えます。

油類

ひもたろうさんに解説いただいたところ、重油類やベンゾピレンなどのことだそうです。油については解説は不要でしょう。食用油以外の油を口にしたくはないですよね。

シアン化合物

シアン化合物はすごく単純に言って、毒です。

例えばシアン化カリウム推理小説などでお馴染みの青酸カリのことです。とても危険な物質ですが、水に溶けやすいという性質があり、水で洗い流すことが可能です。

※ひもたろうさんからシアン化水素は沸点が常温付近で気化するというお話をいただきました。ただ実際の処理としてはやはり水に溶かして除去なので処理手順に変わりはないようです。

重金属類

鉛、ヒ素、水銀、六価クロムなどよく公害問題などで耳にする物質です。これも地下水に溶け、徐々に移動していく性質があり土壌汚染の原因です。ですが、そもそもこれらの物質も自然界に微量に存在している物質です。問題は一度に摂取する量なのです。

4つの有害物質はどう処理すれば良い?

以上の大まかに言って4種類の有害物質が豊洲の土壌から発見されました。確かに何も対策を打たずに豊洲に食品市場を作ることは危険です。

ですが、専門家が協議を重ねて対策をした結果、これら全てを取り除くことに成功しています。その処理方法は大きく分けて3つです。

微生物処理

ベンゼンは微生物によって分解処理することが可能です。

具体的な処理としては土の中にあるベンゼンを微生物に分解してもらうため、土を掘り起こし、餌を与えたり空気を送ったりして微生物が働きやすい環境を作り微生物に頑張ってもらいます。考え方はお酒を造ったり、腐葉土を作ったりするのと一緒です。

加熱処理

油は熱に弱いため、加熱することによって土壌と分離することが可能です。

身近な例で例えるならばお酒を使った料理でアルコールを飛ばすようなものです。和食の「煮切り」では加熱によって煮物の中からアルコール分だけを飛ばしますが、それと同様に油で汚染された土壌を加熱すると土と油を分離することができます。

 とまあ、ちょっと一言では言い切れないみたいですが、加熱することで汚染物質と土壌を分離することが可能です。

水洗処理

シアン化合物や重金属は水に溶けるという特徴があります。そのため、土を細かくふるいにかけながら洗浄することを繰り返すことで、これらの有害物質を取り除くことができます。

身も蓋もないたとえをするならば洗濯機のすすぎ機能です。

洗濯機のすすぎで洗剤が完璧に落ちることはありませんが、誰もそれを気にしたりはしませんよね。実際の豊洲での土壌汚染ではもっと細かなすすぎ工程を繰り返し、汚染物質と安全な土とに分離しています。

洗浄が終わった土壌はシアン化合物も重金属も「無い」と断言して良いレベルだと思われます。

 

実際に豊洲で行われた土壌処理では、汚染された物質の種類によってこれらの処理を組み合わせ、徹底的な土壌改善を行っています。その解説は後編にて詳しくお伝えします。

 

この手の化学的な話なるとどうしてもなじみのない単語が飛び交い、理解するのが難しくなりますが、使われている手法はどれも私たちにとってなじみの深い方法ですし、それだけに、その効果の高さもお母さんなら肌感覚で知っていることでしょう。

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4種類の汚染物質によって対応は異なりますがこれらの方法を駆使すれば安全に、そして確実に汚染物質を取り除くことが可能です。

シアン化化合物は主食にさえ含まれている。過剰に恐れることはない

そもそもこれらの汚染物質はどれもごく自然に存在しているものですし、完全に無くすことは不可能です。

自然に存在しているものですので、微量ならば摂取しても問題ありません。たとえば先ほど毒と言い切ったシアン化化合物ですら身近な例ではアーモンドに含まれていますし、タピオカの原料であるキャッサバにも含まれています。キャッサバは一部の地域では主食として扱われています。毒抜きをして食用にしているのです。

 

大気中からベンゼンが検出されるのも当然のことです。築地や豊洲近辺で排気ガスが漂っていない場所などあり得ません。

 

メディアの大げさな報道には惑わされず、これらの汚染物質の数値が基準以下なのかどうかで判断をすることが肝心なのです。

 

後半では、具体的に豊洲ではどのように処理が行われたのかについてを解説します。

どうぞよろしくお願いします。