時事図解

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山田太郎氏のネット選挙戦術は他業種でも参考になる素晴らしいTwitterマーケティングでした。

先日、豊洲問題でご活躍中のおときた駿都議が「おときた駿ネット応援団」というものを結成し、団員を募集し始めました。

otokitashun.com

ちょっと引用すると

 

 ネット応援団の活動目的は「ネット上における『おときた駿』のポジティブな情報量を増やすこと」です。単純にいえば、Twitter検索で「おときた」等とサーチしたら、良い情報がいっぱい出てくる状態になることが一つのゴールと言えます。

 

これがこの組織の目標です。

主な活動はSNS(主にTwitter)でリツイートをかけたりすることのようです。

この中で特に驚いたのが以下の文章でした。

 

おときた駿に対する誤った情報や誹謗中傷などがあれば、それを訂正・反論するつぶやきを行なってください。批判を目的とする人を個別に本人が相手にすることはできない一方で、誤った情報を放置していると思わぬ形で広がってしまうことがあります。

 

活動の【上級編】とはいえまるで言論狩りのような印象すら受けます。大丈夫なのでしょうか、心配になります。

とはいえここで思考停止してしまっては結局相手のことを理解できないままです。なぜおときた都議がこのようなことを始めたのか、きちんと理解してみようと思ったのが今回の図解のきっかけです。

 

始める前に

相手が現役の政治家ですから、やはりここはおときた都議に対する私の立場を明確にしておきたいと思います。興味ないよという方は飛ばしてください。

おときた都議の支持者ですか?

いいえ、私はおときた都議の支持者ではありません。

別におときた都議が嫌いとかそういう理由ではなく、埼玉県民である私にとって東京都議員であるおときた都議の活動は特に何の関係もないからです。

支持するorしない以前の問題です。

では、おときた都議に対する評価は?

好き嫌いの話になるとけっこう好きな部類に入ります。

まず情報公開に対する態度はとても誠実だと思いますし、その行動力には頭の下がる思いがいたします。そういう意味では「狭い意味での支持者ではないが、広い意味では支持者」とも言えるかもしれません。言葉遊びかも知れませんが。

 

炎上政治家、扇動政治家などという評価もあり、それはある意味事実だと思います。

政治家が行動する以上、そういった批判が起こるのはむしろ当然であり、それよりも必ず抗議ができる位置に彼が居続けることは批判的な方でも意識してあげるべきではないかと思います。ネットで活動し続ける限り逃げ場所はないですから。

扇動の件で彼のことを嫌っている人はきちんと抗議を送れば良いと思います。

私の今回の記事もおときた都議の行動に疑問を覚えたのがきっかけです。

なぜおときた都議に注目するの?

それは彼がネットを使った政治活動をしているからです。

最近、特に感じていることですが、ネットには日本中の英知が集まります。

豊洲問題でさえ、築地に勤めている仲卸の方から土木技術者、一級建築家、さらには反対派の意見までもが集まってきます。それぞれ一級の知見の持ち主ばかりで、私のような者にはありがたい限りです。

これらの周知を集めて政治に活かせたら何かが出来そうな気がします。その何かに今一番近づいている政治家はおときた都議だと思うのです。だから私は彼に注目するのです。

おときた議員が参考にした山田太郎陣営のネット選挙とは

さてここからが本題です。

おときた都議が「おときた駿ネット応援団」を結成するにあたり参考にしたのは、2016年の参議院選挙での山田太郎候補のネット選挙運動でした。まずは彼がどんな選挙運動をしていたのか、私なりに図解してみました。

 

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無名の中年候補参議院選挙で29万票集めたという事実

まず山田太郎氏について。

詳細は次回に譲りますが、2016年の参議院選挙において「表現の自由を守る党」を結成し比例区に出馬。「表現の自由」に関心の高いオタク層をメインターゲットとしてネットでの選挙活動を実施。参議院選挙では29万票という野党の中では最大の個人得票数であったものの、比例代表の仕組みによって落選しました。

大量得票の鍵はTwitterの使い方にあった

この山田太郎陣営でブレーンとして活動した坂井崇俊氏に対して、おときた都議は選挙戦略に対するインタビューを行っています。今回の「おときた駿ネット応援団」もここからヒントを得たようです。文中の引用はすべて以下の記事からのものです。

go2senkyo.com

 

山田太郎陣営はネット対策の中でも特にTwitterを重視しました。

それは「表現の自由」に関心のあるヲタク(文中の表現)層は、匿名を好むからという理由のようです。

またおときた都議もTwitterは「手の届かなかった多くの人にリーチしていくという「攻め」」に向いていると発言しています。

「発信力」を高めるだけでは意味がない

インタビューの中で坂井氏は「ネットで「発信力」を高めるだけでは意味がない」と言っています。なぜならばネット上では「情報の押しつけ」は嫌われるからです。

そこで山田太郎陣営が取った戦略は以下のようなものでした。

 

1、「発信力」を高めるだけでは意味がないため

2、(仕組みを作り)フォロワーが自発的につぶやけば

3、(フォロワー以外の)タイムラインが関連の発言で埋まる(現象を起こす)

 

この戦略を読んだとき、私は「単なる選挙戦略ではなく、現在のTwitterにおいてはあらゆる業種が参考にできるマーケティング戦略だ」と感じました。

1、「発信力」を高めるだけでは意味がない

インタビュー中、おときた都議は通常の選挙のネット対策セオリーをこのように発言しています。

通常、Facebookであればどれだけ「いいね」を獲得してシェアしてもらうか、Twitterであればフォロワーを増やしてRTしてもらえるか。つまり「発信力」を高めるのがセオリーですよね。

Twitterの使い方に関しては言えば、「フォロワーを増やしてRT(リツイート)してもらう」ということが通常のセオリーというわけです。

ですが坂井氏はネット上では「情報の押しつけは嫌われる」と言い、このフォロワーを積極的に増やすという戦略を積極的には取りませんでした。

その代わりに採用したのが「(山田太郎の)フォロワーが自発的に呟く仕組みを作り上げる」という作戦です。

2、フォロワーが自発的につぶやけば

なぜフォロワーが自発的につぶやくと良いのでしょうか。

私はインタビュー中の佐藤氏の言葉から3つのポイントがあると感じました。

①フォロワーのフォロワーにも発信できる

選挙中、山田氏のフォロワーは3万人程度だったようです。もし山田氏が何かをつぶやけば、その3万人につぶやきが届きます。

しかし、情報の伝播はそこでおしまいです。

そこで山田太郎陣営はフォロワーのフォロワーも「フォロワーが自発的につぶやく」仕組みを作れば実質的なフォロワーになるのだと発想を広げたのです。

フォロワーは3万人でも、自分たちの言葉で山田さんのことを応援してくれる人たちのそれぞれのフォロワー数を足していけば、数万にも数十万にもなるかもしれない。

ちょっと格好をつけてマーケティング用語を使えば【潜在顧客】の存在に気付いたと言えるのではないでしょうか。

②何度も投稿を表示させることができる

このプランの一番の白眉はここです。

通常、1つのつぶやきはどんなにRTされても1つのアカウント上では1回しか表示されません。しかし引用リツイートという形でコメントを添えてRTすると、1つのアカウントに何度も最初のつぶやきが表示されるのです。

 

何度も何度も繰り返して広告を見せることで、相手に強い印象を与える戦略があります。【単純接触効果】とかサブリミナル効果とか言いますが、何度も相手に同じものを見せると、表示されたものに対して抵抗感が薄れ、かわりに興味を持つようになります。

 

現状のTwitterでは、先述の通り、通常ですと1つのアカウントに1回のRTしか表示できませんでした。例外は広告を出すことです。

ところが複数のフォロワーが自発的につぶやいてもらえれば、彼らと近しい誰かのアカウントへ【単純接触効果】を狙うことが可能になるのです。

③お礼を言うことで精鋭部隊を作り上げる

さらに山田太郎陣営はアフターフォローもしっかりしていました。

コメントをつけてRTしてくれた人にお礼を徹底したのです。

坂井)なので、宣伝してくれたことに対してお礼を言うことなどを意識しました。山田太郎さん本人にRTされたり、引用RTでお礼などをされるとされる側は嬉しい。それで、もっと山田太郎さんのことを応援したくなる、色々な宣伝をつぶやいてくれる。

これもマーケティング用語ならば【顧客ロイヤルティ】の向上を目指した戦略といえます。引用にもありますがRT元の本人から声がかかれば誰だって嬉しい。

もちろん、声をかける方は大変です。でもそれをやった。

するともともと山田太郎氏に興味を持っていたフォロワーは「精鋭部隊」となります。山田太郎氏が何かつぶやけば積極的にコメント付きでRTしてくれますし、山田太郎氏に対する誤解があれば、進んで訂正してくれる。ものすごい勢いでポジティブな情報が伝播されることが期待できます。

3、(フォロワー以外の)タイムラインが関連の発言で埋まる

このネット対策が成功すると、山田太郎氏がつぶやけば彼の直接的なフォロワーはおろか、フォロワーのフォロワーのタイムラインまでもが関連した発言(投稿)で埋まることになります。

するとフォロワーのフォロワーまで実質的なフォロワーとなり、結果として数倍、数十倍のフォロワーを獲得でき、結果、自分の政策を他の候補を圧倒する規模で広めることが可能になったというわけです。

山田太郎陣営はフォロワーに、自分の言葉で呟いてもらうことで他の候補を圧倒する情報の総量を得た、のです。

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ひとまずのむすび

私は山田太郎氏についてはあまり良く知りませんでした。

噂で「やたらオタクに訴えかけてくる政治家がいる」というふうに聞いたことがある程度の存在でした。

しかしこのインタビュー記事を読み、なんて的確なマーケティング戦略を行ったのだろうかと大変に感心しました。

おときた都議が参考にしたくなるのもうなづけます。

冒頭でも書いた通り、このTwitterマーケティングは、あらゆる業種に応用が利くと思います。今後、私もリツイートするときは可能な限りコメントを付けた引用を心がけたいと思いました。

 とはいえ、これをおときた都議がそのまま踏襲するのが正しいことなのかどうか。

次回は山田太郎氏とおときた都議の違いから、「おときた駿ネット応援団」の考察をしてみるつもりです。次回と言いつつ、同時に公開するんですけどね!