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時事図解

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お母さんのための社会問題講座~盛り土は何のためにあるの?~

前回の内容からずいぶん間が空いてしまいました。あの後、いろいろと立て続けに報道が行われていたため、しばらく様子を見てから再開しようと思っておりました。

お母さんのための社会問題講座~豊洲の土壌汚染は本当に処理されているの?~ 前編

お母さんのための社会問題講座~豊洲の土壌汚染は本当に処理されているの?~ 後編

お母さんのための社会問題講座~豊洲の汚染水について(1)~

お母さんのための社会問題講座~豊洲の汚染水について(2)~

先日、かがやけTkyo都政報告会 にて生田よしかつさんが仰っていた豊洲風評被害を何とかしたいというお言葉に触れ、微力ながら協力したいと思い、また報道もだいぶ収まってきたため再開の運びとなりました。

your-party-tokyo.jp

今回は豊洲市場で一番の混乱を引き起こした盛り土問題について、そもそも、盛り土は何のための存在なのだろうかというところについて解説していきます。

そもそも盛り土は汚染物質の蓋なのか?

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そもそもの盛り土の目的

最初に知っておかなくてはならないことがあります。豊洲の土地が東京ガスから東京都へ売却された時点で、土壌の表面から50cmまでの部分は処理がしてあったのです。

第一回 専門家会議 資料4 東京ガスが実施した土壌汚染対策 (1.4MB)

さらにこの専門家会議が始まったときはすでに一部の地区では盛り土がなされていました。

すでに区画整理事業が行われていた

土壌汚染に対する調査が始まったとき、すでに豊洲では土地区画整理事業による盛り土がなされておりました。つまり当初は、汚染と盛り土とは直接関係が無かったのです。

かつて東京都の技術職員であった大貫剛さんは以下のようにコメントをしております。

 豊洲の盛り土は「工業用地のため船舶用の低い埋め立て地だったのを市街地化のため高潮や津波を考慮してかさ上げする」ためのものだったのです。

豊洲の土壌利用計画の変遷

このような状態から、専門家会議、技術会議で汚染対策が話し合われ工事が行わました。そして建物が出来上がった状態で確認してみると建物の地下に盛り土が無く、謎の空間ができていました。これがそもそもの騒動の発端です。

ここでは騒動そのものはいったん置いておいて、豊洲の土地はどう利用される予定だったのかを時系列順に把握してみましょう。

東京ガス跡地だった頃

まず東京ガスから東京都へ用地が引き渡された段階では、豊洲の土壌は表面から50cmは処理された土であり、その下は汚染されたままの状態でした。また詳細は後で述べますが、このころは東京都が買収したのちよりも土地の高さが低い状態でした。

専門家会議の当初案

その後、汚染土が問題となり専門家会議が招集され対策が話し合われました。

専門家会議の汚染土壌対策は会議の途中で変化していくのですが、当初の予定としては地下の汚染土壌には手を付けず、上に盛り土をかぶせ、その上にアスファルト等を敷くことで汚染物質を封じ込める予定でした。

つまり「蓋の意味で盛り土をした」のではなく「元から予定していた盛り土に蓋の役割も期待した」という方が正しいのです。さらに言えば、最初から汚染土壌と盛り土の間に砕石層を設置して地下水が上がってこないように管理しようとしていましたので、蓋としての役割も副次的な要素に過ぎなかったのです。

技術会議の想定案

その後専門家会議が進んでいくうちに地下深くに存在する汚染物質も除去する方針が定まりました。

今後東京都がとるべき対策のあり方 (82.9KB)

この決定を受けて具体的な工法を決めていったのが技術会議です。

実はこの技術会議の最中に豊洲の土地全体に盛り土をせず、一部分は空間として残しておく方針が定まっていました。技術会議の資料にもそれが描いてあったのですが、技術会議の長谷川氏は地下空間の認識はなかったという旨の発言しておりますのでそれに従って考えます。

技術会議は専門家会議の方針に従って、地下の「汚染土壌」を浄化する具体的な工法を取りまとめ実施しました。工法については前回までの更新でご紹介した内容となります。

これが予想以上にうまくいき、豊洲の地下は環境基準以下の地下水へと浄化することに成功しました。

この時点で、盛り土に蓋としての役割はなくなり、本来のかさ上げのみが期待される目的に戻ったのです。なお、技術会議は盛り土は豊洲の土地全体に行うという認識だったようです。

現在の豊洲の土壌概況

ところが、建物を建ててから例の「謎の空間」が発見されました。これは現在のところ「メンテナンス空間」という名称で呼ばれております。

なぜこの「メンテナンス空間」が問題になっていたかというと、東京都は知事や都議会に対して「豊洲は土地全面を盛り土で覆っている」という風に説明していたからです。

ところが、第三者の指摘によって「謎の空間」があるという騒動が起き、それを小池知事が「盛り土があるという説明だった。空間のことは聞いていない」と問題視したことで大騒ぎとなったのです。

 

とはいえ技術会議によって地下の汚染は取り除かれています。建物が建つのでかさ上げの必要もありません。したがって理屈の上では盛り土が無くても問題ないのです。

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まとめ

そもそも豊洲のような大型の建物には地下にメンテナンスのための空間は絶対に必要ですし、盛り土の上に建物の建てることは耐震性に著しい悪影響があります。盛り土は無い方が良いのです。

また市場問題プロジェクトチームの佐藤氏によってこの「メンテナンス空間」には様々なメリットがあることも指摘されました。

市場問題プロジェクトチームの佐藤尚巳氏の発言に感動したので主旨を図解してみました

たとえ地下に汚染物質が残っていて地下水の上昇とともにその汚染物質が上ってきたとしても、地下水管理システムやこの「メンテナンス空間」によって二重、三重にも対策が施されています。

したがって「盛り土」問題は安全性の問題ではなかったということは知っておくべき事実だと思います。

 では問題は?

東京都内部での情報共有がまずかったのは事実ですが、それは盛り土の有無とは関係のない事情でしょう。

むしろ地下水管理システムが安定して動くかどうかの方が重要ですが、これは大型の設備ですので調整に時間がかかります。今は見守るしかありません。またうまく動かなくとも対策を取ることは十分に可能です。

また当初と設計計画が変わったのは事実ですし、今現在、移転が中断している間に安全性の再点検することは「安心と安全」両方の面からもぜひやるべき課題だと思われます。

ただし工事計画そのものはきちんと手順を踏んで行われているわけですし、移転が不可能になるほどの重大な過失があるということはまず考えられません。

過度な心配をせずに推移を見守っていくことが重要なのではないでしょうか。

 

本日も良い知見を得られたことを感謝いたします。