時事図解

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石原都知事の会見内容は無責任とは程遠い

3月3日、石原慎太郎氏が豊洲問題についての会見を行いました。

豊洲問題を追ってきた筆者からみると、会見後の質問には不勉強な点が目立ち、あまつさえ石原氏を悪者に仕立てようする残念な者すらおり、日本記者クラブという名の会場にふさわしい会見であったかどうかは甚だ疑問です。

 その後の報道も石原氏に対する評価は芳しいものではなく、この問題に関心を持つ一般市民に石原氏の発言がきちんと届いていないのではないかと危惧します。そこで石原氏の発言のうち豊洲移転に関する部分についての主旨を図解してみました。

石原氏の言う行政の作為とは?

まず石原氏の冒頭の発言で以下のようなものがあります。

行政の責任というものは2つ種類があると思います。それはですね、作為に対する責任。それからもう1つは不作為にする責任です。

このうち、「作為」とは石原氏が知事時代に裁可した豊洲用地取得に関することであり、対して「不作為」とは豊洲問題に対する小池知事の対応のことを指すのでしょう。

では、石原氏の作為とは何のことなのか。これが今回の図解のテーマです。

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石原氏は豊洲用地の取得に必ずしも前向きではなかった。

まず石原氏は、知事就任前からすでに都庁内で「豊洲用地取得が既定路線」であったことを指摘しています。

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1986年、大井市場(現大田市場)への移転が築地の内部業者の反発などから取りやめとなり、築地再整備の方針が決定されました。これに従い、都は厚生会館を退けるなどの苦心の工事で工事用の種地を確保し、築地の再整備に乗り出します。

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 当ブログの読者はよくご存知でしょうが、この再整備は400億円を投じながら失敗に終わります。特に問題となったのは営業をしながらの工事が大変に難しかったことで、工事車両と商品を運ぶトラックとで動線が大混乱してしまったのです。

結局、築地の再整備は頓挫し、業界6団体による臨海部への移転の可能性への調査・検討の要望が出されます。この頃から築地移転計画が本格的に検討され始めます。

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そして1999年に石原慎太郎氏が東京都都知事に就任するのです。

会見で石原氏が豊洲移転は既定路線であったという表現をしていますが、このように石原氏が知事に就任したときには確かに豊洲などの臨海部への移転はかなり具体的に検討され、石原氏が多摩地区への移転案を出しても検討されなかったという主張は十分な説得力を持つことが分かります。

石原氏にとって豊洲問題は前任者からの引き継ぎという色合いが濃い仕事であり、関わり方が淡白なものであっても無理もないことかと思います。時系列を整理すると、豊洲用地取得に石原氏の積極的な関与があったとは到底考えられないのです。

みんなで知恵を出して、力を出して、決めている

だからといって石原氏が豊洲用地取得に対して無責任であったかというと、けっしてそうではありません。政策に対する熱意の量と責任の有無は分けて考えるべき問題です。

知事の責任とは築地移転問題を解決することであり、結果を見れば石原氏は豊洲用地を取得し移転問題に道筋をつけているわけですから、十分に責任を果たしているといえます。

また、その結果に至る過程も、文句のつけようがありません。石原氏はこのように発言しています。

こういった問題を司々で、みんなで知恵を出して、力を出して決めていることで。その総意として上がってきたものに対して私たちはそれを認可したということですから。

つまり石原氏は独断で豊洲問題を決定したわけではなく、様々な関係部署に調査させ、用地取得が適正かどうかを諮問し、議会に承認してもらい、東京都の最終責任者として用地取得を実行したわけです。無責任とは程遠い対応だと思います。むしろ専門家にも諮らず、議会の承認も得ずに実行するほうがよほど無責任ではないでしょうか。

意思決定にあたって重要な3つの諮問機関を、会見の冒頭で石原氏が挙げた順に確認していきます。

・審議会

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これは会見中にもあった東京都財産価格審議会のことを指した言葉だと思われます。

豊洲の用地取得に関し、石原氏が取得価格を不正に操作することは不可能です。なぜならば、2億円以上の取引に関しては、この東京都財産価格審議会が適正価格を審議して決めているからです。

当然、委員は外部の専門家が選出されており知事が関与することは不可能です。この件については石原氏の右腕であった浜渦武生氏も同様の内容を発言しています。

・専門会

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これは、会見の内容からして「豊洲市場における土壌汚染対策等に関する専門家会議」を指していると思われます。石原氏はこの専門家会議から土壌汚染は日本の技術で処理可能という報告を受けており、同内容を築地の内部業者に移転をお願いする手紙の中でも同じ表現を使うなど、移転判断の重要な根拠としてしています。

・議会

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仮に石原氏が強い独断で豊洲の用地買収を決定したとしても、都議会が承認を与えなければ実行に移すことはできません。都議会は独自の調査権限を持っており、石原氏(というよりも都庁)の作成した用地買収案を精査することができます。

築地移転に関する議会の動きは複雑で、きわどい部分も多くありましたが、結果だけを取り出せば、豊洲移転は決定され用地買収も議会で正式に承認されております。民主主義の手続きに則ったやり方で石原氏は豊洲移転を決定しているのです。

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石原氏はきちんと様々な専門家や権限を持つ議会に対して用地取得の是非を確認しているのです。石原氏は多くの人々が正しい順序を踏んで承認した案を石原氏が最終責任者として裁可しているにすぎません。

豊洲移転という重要事項は当時の東京都の関係者全員で話し合って決められたことなのです。

石原氏は「みんなで知恵を出して、力を出して、決めている」という発言をしてします。その結果を石原氏は政治家として、政治判断したわけです。石原氏の責任は最終責任者としての責任であり、それはきちんと果たされているのです。

この仕組みに疑問を持つということは民主主義の否定でしかありません。

石原氏の言う政治の作為とは何か。

石原氏の言う政治の作為とは何か。それは手続きに則り、衆議に諮り、受け取った結果を元に決断することであり、会見で石原氏はその具体的な内容を語ったに過ぎません。

とはいえ新しい情報が出てきたわけではないですから、確かにその点は残念な会見でした。

この会見で分かったことがあるとすればただ一つ。

毎週金曜日はジャーナリストの定休日なのだろうということぐらいです。