時事図解

時事問題を中心に気になることを図解しています。図解依頼募集中!

上田都議と音喜多都議には、都民ファーストの看板を背負ったあの都議選から目を逸らさないでほしい。

10月5日。元都民ファーストの会所属の上田令子・音喜多駿両都議が、会派離脱の会見を行いました。

logmi.jp

普段は都政内部の話ということで口出しを控えておりましたが、この問題に関連する希望の党は国政を目指していること、音喜多都議とは面識がある程度ですが一応、顔見知りということで個人的な考えを書かせていただきます。

上田都議ー都民ファーストの会運営への不満

まず上田都議が会派離脱の理由を大まかに言って三つに分けて語りました。なお、この記事は私からの視点であり、上田氏の語り口と必ずしも一致するものではありません。

・所属地域政党の解散要求

上田都議は都議として活動する傍ら、地域政党「自由を守る会」を設立し代表を務めていました。しかしこの組織は都民ファーストの当時の代表(野田数氏)によって、解散を命じられました。
上田氏は「水を飲むときには井戸を掘った人を忘れてはならない」という言葉を引いて、知事選においてこの地域政党がいかに小池知事誕生に尽力したかを強調しています。この解散要求は上田氏にとって激しい苦痛であったことでしょう。

・金銭負担

上田氏は都民ファーストの会の資金繰りについても苦言を呈しております。政務活動費15万、党費6万円が毎月徴収されており、後の質疑応答のなかでも自民党と比較しても高い負担であることを訴えています。また資金集めのためのパーティ券を配ることも要求され、これは政治信条の観点から拒否をしたとのことです。とにかく都民ファーストからの金銭的要求は限度を超えていたということが分かります。

・議員活動の制限

また上田氏は閉会中の文書質問や、委員会での資料要求が禁じられていたことも離脱の理由に挙げています。
文書質問とは、議会の閉会中に議員が行政に対して質問できる制度です。(ちょうど音喜多都議が自らの失敗を基にして解説している記事があったのでリンクしておきます。)
また議員には委員会で資料要求する権利があり、上田氏はこの制度を活用することを得意としていたようですが、それも禁じられたことが不満であった様子です。(こちらも上田氏がブログで開設した記事がありましたのでリンクしておきます。)

以上のように上田氏は、都民ファーストの会が議員個人に対して著しく活動を制限し、高い金銭負担を要求することが耐えらず、党の運営に対する不満が離脱につながったようです。

音喜多都議ー小池政治への不満

一方、音喜多氏の場合はどうでしょうか。音喜多氏の場合は、主に会のカバナンスと小池都知事に対する不信感が離党の決め手になったようです。

・会派のガバナンス

都民ファーストの会は、東京都の地域政党にも関わらず、都知事の特別秘書である野田数氏が代表を務めていました。それが都議選になると、二元代表制という地方議会の原則を無視するかのように小池都知事が代表に就任し、都議選が終わるとまた野田氏に代表を戻します。
その後、特にそれらしい理由も明かされずに小池氏の秘書であった荒木千陽氏に代わります。こうした代表の頻繁な交代は数名の役員のみで決められ、会派に参加する都議ですら何ら意思決定に参加できませんでした。

小池都知事への不満

また音喜多氏は「右から左まで、思想も政策も理念も異なる政治家たちが200名近く集まっておられます」と小池氏が設立した希望の党へ不信感を表明しています。知事本人に対しても、都民ファーストの会の代表を辞任する理由が「都政に専念する」であったにも関わらず、舌の根の乾かぬ内に打ち出した希望の党の設立と知事自身の国政復帰について批判しています。

音喜多氏の場合は、要するに「小池政治」そのものにノーを突き付けたということでしょう。

小池政治の不透明さは今に始まったことではない

筆者は上田氏、音喜多氏が都民ファーストの会を離脱したことを評価しています。都民ファーストの会、というより小池政治そのものが、うわべだけを飾った実務能力皆無の政治ですし、そのような政治に与することは一刻も早く辞めるべきです。

しかし両氏とも会派離脱に伴いもっともな理由を用意していますが、一方で「都民ファースト」の看板を借りて選挙に勝利しているという事実から目を逸らしています。

この点を無視するわけにはいきません。

都議選が行われたのは今年の7月です。今から数えてたった二カ月ほど前の出来事です。しかし一方で都民ファーストの会の結成は昨年の9月であり、都議選までには約9か月の期間があります。

両氏の不満を聞けば、それが都議選後に急に湧き出てきたものでないことが分かります。上田氏の「自由を守る会」が解散に追いやられたのは4月です。また音喜多氏の重視する都民ファーストの会の情報公開やガバナンスが明朗であった時など一度としてありません。

たった2カ月の熟慮が、9カ月の積み重ねに勝ることはありうるのでしょうか。

小池政治がひどかったのは今に始まったことではないのですが、結局、両氏とも都議の議席を守るため、都民ファーストの看板を利用する道を選んだのです。この点、言い逃れはできません。

劇薬を求めて副作用を受け入れぬ、は許されるのか

何を利用してでも勝つ姿勢は政治家にとっては必要なものなのかもしれませんが、そうであれば、その裏で失ったものから目を背けてはいけないはずです。

小池知事やその周辺の顧問団、あるいは都民ファーストの会によって失われたものを列挙しましょう。


・東京都の職員は仕事に対する尊厳を傷つけられ、長時間勤務により家族との団欒を奪われました。

・オリンピック関連では、周辺自治体をはじめとした関係者すべてに迷惑と負担を与えています。

・そして築地移転問題では、今もなお風評被害を放置し、水産業者を苦しめています。

豊洲に移転できなかったことで失われた富は幾らになるのでしょうか。

・百条委員会で疑われた人々の名誉はどう回復されれば良いでしょうか。

・議会が埒もない捜査ごっこにかまけてたせいで出来損なった数々の施策の責任はどうするのでしょうか。 

 

みんな小池政治が起こした損失であり、上田氏、音喜多氏はそれら議員という公的な立場から支えていたのです。これらは申し訳ありませんと謝って済む問題ではありません。
混迷する都政に目をつぶって都議選に挑み、結果として手に入れた議席の重みを直視していただきたい。小池政治という劇薬によって得た勝利の代償です。薬に副作用はつきものです。ましてや副作用の被害を受けるのが都民とあってはなおさらのことです。

前貸しした信用は少しずつきちんと返済してほしい

政治家にとって一番大事なことは信用でしょう。信用は金銭にもたとえられますが、今や両氏の信用はマイナスの側に大きく傾いています。

信用と金銭の例を続けさせてもらうならば、両氏の都民ファーストの会からの離脱は身の丈に合わない借金に苦しんだ末に不渡りを出したような状態です。その信用の出どころは小池政治という名の闇金融だったのですから返済に苦しむのは当然というべきです。

今さら両氏が口を酸っぱくして小池政治を非難しても何の意味もありません。そもそも、そんなところから信用を借りたほうが悪いのです。どんなに苦しても頼ってはいけないものに手を出したのです。

 やり直しはできる。

しかし身の丈に合わない借金をしてしまった人がやり直せない社会というのも筆者は好みません。
このような人々に対しては、利子の支払いを減免し本体のみを分割して返済していくように和解するのが通例です。それに倣って両氏も、都民から前借した信用という借金をきちんと分割返済していってほしいと筆者は願います。

派手にメディア受けを狙うのではなく、地道な活動で取り返していくのです。平坦とは程遠い道のりですが、ぜひやり遂げてほしい。

 

そもそも小池政治に騙されたのはこの両氏のみではありません。先の都知事選挙で投票した291万もの都民も結果的には失敗したのです。私はあの選挙に参加していませんが、私自身小池氏に投票してしまった可能性は十分にあります。それくらいひどい選挙でした。彼らの失敗をあげつらうだけでは何の解決にもならない。両氏の失敗を責めるならば、同様にこの291万人も責めなくてはならなくなります。

 

まだ働ける債務者が事業を投げ出すことは誰にとっても得にはなりません。
上田氏、音喜多氏ともまだ十分に働ける年齢であり、働く意志もあります。今から議員を辞職するというのは良い選択肢ではありません。また個人的な人間性を見ても、両者とも都政に対して真剣に向き合っているということは十分に伺えます。

今こそ真の情報公開を

ちなみに債務を負った事業主が信頼を勝ち得るもっとも確実な方法は、債権者のところに定期的に顔を出し事業内容の報告をすることです。

せっかく自由の身になったのですから両名とも、ネットなどを通じて双方向な情報発信に力をいれていただければと思います。厳しい言葉にも行きあたるかとは思いますが、無視をせず誠実に職務に取り組んでいただければ、いずれはそのような言葉も変わっていくのではないでしょうか。いずれにしろ、両氏は今まで語り合うこともできなかった有権者との話し合いに時間を割くべきだと思います。

逆に一番やってはいけないことの通例は債権者を無視することです。また上辺だけを取り繕い、派手に商売をしていると見せかけて他者を騙そうとする悪い債権者になることも望みません。

 

ともあれ、さしあたってお勤めご苦労様でした。
冷静になれるだけの休養を取った後、ご活躍での挽回を祈ります。