時事図解

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~Another choice~ 江東区 高橋めぐみ氏(前編)

序文 この企画に先駆けて

2017年の東京都議会選挙は小池知事率いる「都民ファーストの会」の圧勝だった。その背景には都民ファーストを率いていた小池陣営の巧妙な選挙運営があったのは間違いない。一方で、今現在になってなお「都民ファーストの会」がどのような政治を志しているのは見えてこない。情報公開を第一に掲げている政治陣営が取材制限を今なお徹底しているのは矛盾以外の何物でもない。

選挙では大勝した「都民ファーストの会」だが、その勢いがこのまま続くとは当の「都民ファーストの会」自身でさえ考えていないはずだ。都議選での圧勝は百点満点の出来と言ってよく、山の頂に達してしまえばあとは下るしかない。

何といっても選挙の結果ではあるので、これ以上は言わない。その結果には十分敬意を払うが、しかし、一方で負けた陣営にも耳を傾けることもまた民主主義ではないだろうか。

もし、あの都議選で都民が別の選択をしていたらどうだったのか。それを取材し記録しておくことには意味があるのではないだろうか。

今回からはしばらく「~Another choice~」と題し、都議選に落選した方々のインタビューを行っていきたいと思う。

 

なお、都議選の結果からインタビュー対象は自然と自民党関係者が多くなるが、筆者としてはなるべく多くの政党に取材したいと考えている。この人の意見を聞いてみたいという方がいたらぜひ筆者までご連絡をいただければ有難い。

 

今回は、江東区から出馬した高橋めぐみ氏に取材した。

豊洲移転問題がご縁でいちどお目にかかったことがあり、快く取材を引き受けていただくことができた。

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高橋めぐみ氏 略歴

 江東区亀戸出身。元衆議院議員木村勉氏を父に持つ。結婚・出産後、産後うつを経験し、それがきっかけで政治を志す。平成19年江東区区議会に立候補し当選。3期目の任期中に辞職し東京都議会選挙に立候補。約21000票を獲得するが落選。

 亀戸の事務所にて

――ブログ読ませていただきました。 とりあえず直近2年分と最初の一年を。

そんなに読んだんですか。えー、恥ずかしい。もう全部消そうかと思うぐらい恥ずかしい。昔のやつ読むと恥ずかしくてしょうがないです。

 

――こういう言い方が正しいのかどうか分かりませんが、最初のころは「女性として頑張る」みたいな、よくありがち内容だったんですよね。それが議員として活動していくうちに徐々に変わっていく。

 だから余計に恥ずかしいんですよ。「今、全然違うこと思ってるのにな」ということも言っちゃってるので。(将来)いろいろ切り取られることになったら、「あの時ああ言っただろ」って言われるようなことも残しちゃってるんです。それも自分の成長の過程ということで、許していただければと思って、今も残しています。

 

当選していたら一番やりたかったこと

——さて、今回はちょっと残念な結果でしたが、もしも都議になった時、一番やりたいことからまず伺いたいです。

 優先順位的にはどうかわかりませんが、私の場合、自分がママだったころの苦しい経験から議員を始めました。そういう思い出を忘れちゃいけない、こういった思いをするママたちを一人でも多く救いたいっていう気持ちで区議になりました。おかげさまで区議のなかでは自分がやりたかったことが大体できてしまったんです。じゃあもう、次は出来なかった待機児童問題だと思いました。

 

――都議選ではあまり大きく取り上げられませんでしたが、東京都での喫緊の問題ですよね。

待機児童のことは江東区でもやっていたんですが、それでも追いつかない。これはやっぱり国と都だなと思いました。私が一番感じたのは、たとえば「自分のところを保育園に使ってもいいよ」みたいな方がいたとしても、建築の用途変更ができなくて。建築基準に引っかからない建物って言うのがネックになって厳しいんです。(※補足 現在、既存の建物を保育園等に用途変更する場合、建物全体が建築基準法に適法である証明が求められるがこのような建物は少ない。)

東京都が、時限的な措置で良いので変更してもらって(保育園を増やす措置を)やってもらえば少しは変わるんじゃないかなっていう考えがあって。少しでも保育園を増やしていくことをしなきゃいけない。

 

――高橋さんとしては一番にやりたいことは保育園の問題ですか。

保育園、そう、子育ての問題ですね。子育てしやすい東京にして、今更遅いかもしれないんですけど、やっぱり出生率を上げたいですよね。10年遅かったなと思うんですね、本当は。これを団塊の世代ジュニアたちが産むっていう時にもっと良い政策してればだいぶ変わったのかなと思うんですけど。

 

――僕は氷河期世代の一つ下なので、この年代の方がもう少しフォローされたら良いなと思ってますね。

「保育園作れ、作れ」って言ってると思われたら嫌なんですけど、本当は違うんですよ。子供が小さいうちは、自分が育てた方が親にとっても良いし、子供にとっても良いとは思っているんです。三歳児神話を信じているわけじゃないんですが、あの限られた時期、話せない、喋れないというあの子たちと向き合ってやることで、親って成長していくので子供のためだけではない。自分も実際苦しかったんですけど、あれが自分を成長させてくれた。だからあの時期、子供を見られないのはもったいないなって思うんですよ。

ただ今それが出来ない状況、働かざるを得ない状況の方が今進んでしまっているのであれば、だったら保育園を増やすしかない。ニーズがあるわけだからそれは埋めていかないと上手くいかないし、女性が輝く社会って言って仕事を続けることを前提として働いてくださいと、国がそういう風な方向であれば、そうやってやるのは仕方ない、保育園は作らなくてはいけないという考えでいます。 

東京都政のあり方について

実は私、都議会議員不要論者で東京都っていうガヴァナンスはもっとシンプルにして、区に色々移譲する、移管するということをして良いっていう考えなんです。

 ただ広域的にやることとそうでないことってあるので、そこはしっかり精査する。例えば児童相談所なんかは今まで東京都がやってたのを今度は区にやるみたいな話になっているけど、区内に1個あるのはそれはそれで良いんですけど、たとえば江東墨田江戸川などの城東5ブロックくらいのエリアに大きな奴が1つあって、それから支店的な感じでやるのが一番いいなって。1個1個の区にしてしまうと、それはそれで循環しないというかいろんな差ができてしまうって事もあるので。そういうことをもっと丁寧にやりたい。

 東京都議会のほうに入れば、自分は区で10年間やった経験があるので「これは無駄じゃないか」っていうのをもっともっとできたんじゃないかっていうのがあります。最初から東京都議会にいたらなかなか分からない。それこそ1個1個提言していきたかったですね。

 実はそっちの方が一番やりたかったことなんですよ。東京都ってあんだけ大きな必要があるのかな、もっとシンプルにして都議会議員なんていらないから、もっと区にお金も権限も移した方が良い。区長会だの議長会だの副区長会でも良いんですが、そういった人たちがお互いに意見を言い合って、23区のゴミの清掃のあれみたいな感じでも良いと思うんですけど。

 区議時代の活動について

――区議でできることは大体できたと仰っていましたが、具体的にどのような政策をやったのかについて伺っていいですか?

 自分がやっぱり苦しかった産後うつに関しては、産後のケアってことでケアセンター的なことですね、助産院で宿泊ができるシステムを設置したりとか、産後で疲れているお母さんと子供を預かって休ませるみたいな施設を作ったり。そうですね、基本的に自分がやりたい産後系のやつはみんな…(といっておもむろに事務所を探し回る高橋氏)

 産後と保育…今日、新聞持ってくれば良かった、(事務所内を探しまわる)自分がやった…待ってください…色々…一瞬、すぐ戻ってきます…2分のところなので。

 

(高橋氏、約5分、不在したのち帰還)申し訳ございません。

 

――いえいえ、むしろこういう生活感のあるアクシデントが面白いんですよ。普通のインタビューだとこういうのは絶対に端折られるじゃないですか。だけど僕の場合はこれぜんぶ(ネットに)上げられますから。

 えー、ほんとですか?

 

――もちろん、ダメって言ったところはカットしますけど。

 

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これが私の実現したものなんで、 一応ね。(と言ってパンフレットを差し出す)議員の人って「これは自分がやりました、あれは私がやりました」って言うじゃないですか。他の人たちだって質疑をされてることもあるだろうし、自分だけじゃできない。だからあまり言わないようにしてるんですが。今回は分かりやすいようにやったほうが良いということで(パンフレットを)作りました。

これは私が言ったからできたのもあるんですけど、もしかたしたら違う方も言ってることもあるかもしれません。(自身の提言は)これだけじゃなくて「女性の視点」じゃないパターンもあるのですか、そういうのは一切載せてないんですよ。それ入れちゃうと全然違うことになっちゃうので。とりあえず。これがやったことですね。

 

――こうして拝見させていただくと、訴えているのは女性が子供を産んで育ててさらに社会でも働いていくというお話ですね。女性からはすごく支持が集まりそうな感じがするんですけども。

 今回は浮動票が入る状況ではなかったので、厳しかったのかなぁ。普通だったら多分、もっと理解していただける感じだったのかなと思いますね。

 

――僕がこのインタビューをしているのは、そこが気になったからなんですね。江東区で受かった方々はもちろん立派な方々だったと思うのですが、もし当選した方たちの言動が「ん?ちょっとおかしいな」って思った時に、高橋さんが「女性の立場に立ってこれだけのことをやってきて、都議になってこれだけのことやりたかったんだ」っていうの知っておけば、例えば次の選挙の時はこの人の話を一回聞いてみようっていう気持ちになれるんじゃないかなと。

 今回は逆風だったんですけども、たとえば私が街で演説していると、私のことを知らない人も来て聞いてくれて。「良かったです、絶対入れますから」っていう女性の方もいました。話を聞いてくれればすごく共感してくれるんですけど、 日数もなければ機会も少ないし、いくら私が演説会をやりますといっても、そこにわざわざ来る方ってなかなかいない。とにかく辻立ちをするとかして、地道にやるしかなかったですね。討論会とかもっとそういった場で自分のキャラクターとか出せればもっと良かったんだけど、決められた話ばかりですのでそういう意味では…。

政治家のネット活動について

 ――政治家の方全般に対して不思議だなと思ってるんですけども、これだけインターネットが普及して自分で動画を配信できる状況なのになんでみんなやないですかね。

 自信がないからじゃないですかね。いろいろ突っ込まれて反論するのもまた大変だし。「あのとき言ったじゃないか」って残るのもきっと怖いのかもしれません 。

 

――嫌なものですかね。

 でも、自分がやりたいと思って、議会に行ってそれできなかったらできなかったで、私はねそれを受け止めなきゃいけないことだし、言っただけで終わっちゃうかもしれませんけど、でもそれも一つアクション起こしているわけですから、私は言ってもいいと思いますよ。

 

――報道特注みたいに飲みながらやるのも好評みたいですし。それはなくても今回の都議選だと川松さんが自分で動画をアップして政策を説明していました。あれはよくまとまっていて良かったと思います。youtubeに上げておけばQRコード一つで、これ見てくださいねって言えますし。そうするとその人のキャラクターとかわかるしすごくいいと思うんですけども。

私は動画やったんですけどね。facebookの方から。あと、twitterからも見られるようにしたんですけど、 あんまり長いと見てくれないかなって、1日1分半とかそれぐらいの長さでテーマ決めて話をしたんですけどね。

 

――有本香さんというジャーナリストの方の本の中で、 今回、激戦区だった北区の高木けいさんに対して「3つのFだよ」と仰っていたんですね。とにかく定期的に毎日毎日情報を出せ、 そういうのがあれば全然違うんだと。高橋さんの場合だと、ブログ。昔は毎日やってらした。

 毎日やってました。

 

――「見てくれない~」とか「コメント入れてよね」とか、大変に共感できました。辛い気持ちはよくわかるんですけど、僕みたいに興味持った人間が振り返ってみてどう高橋さんがどういう風にその議員として変わっていったのかなっていうのがすごく分かりやすい。だから信頼感が持てる。

 経験がその日にあったことを書いてますからね。あの時は毎日ってやってたんですけどね、もう毎日やるのはどうしようかなって思って、思い切ってやめたんですよ。

 

――もう、すごく良くわかります。その気持ち。

 けどやっぱりダメなんですよね。何かを発信している方が良かったなって自分では。自分の一つの記録、成長記録にもなる。

 

――あとやっぱり家族のこと結構書いてらっしゃるが印象的で。

 書いてましたね。

 

――今でも書いていらっしゃる。

 今でも書いてましたけど、特に書いてましたね。 あの頃は。あまり意識しないで思ったことを書いてたので、はちゃめちゃだってよく怒られたけどしたんですけど。 

障害者福祉について

――今日は娘さんの話を見て、障害児の話から入るのかなと思ってたんですよ。そういう活動に注力されているのかなって。

 障害児政策は、東京都よりは本当は国で根本的にやってもらいたい話なんで、それはそれで違うアクションを起こしたいと思っているんです。自分が四年間空きますし、やりたいことがいくつかある。そのうちの一つが自分も議会で言ったんですけど、障害者の人達の賃金というか工賃って安いんですよね。どうしても預け先みたいな感じになってます。

 

――実は僕、ひと月くらいそういうところで働いたことがあって。家族の方からは凄くの感謝されるんですよ、「うちの子を働かせてくれてありがとう」って。ただやっぱりその障害者の方が自立するって意味ではちょっと足りないですよね。

 でしょう。それはね、マッチングもあるなと思って。障害の方は、実はこういうことはすごく長けてるってあるじゃないですか。例えば、うちの娘なんかはやすり掛けをやらせたら休みも取らずにずっと無心でやるんですよ。

 

――その気持ち分かりますね。僕も何かを平らにする作業が大好きなんですよ。

 だからそういうのがあれば良いのにって。それぞれあると思うんですよね。それを一個ぐらい前の議会で言ったのかな。でもエリアによっては難しいわけですよ。江東区とかだけだとなかなかないかもしれないけども、ある程度の大きさなら「じゃあこの地域はこういうのあるよ」という形にできないかなって。その人に合う仕事っていうのをマッチングさせたい。

あと、仕事も障害者が作ったから安いんじゃなくて、逆に障害者の人が一生懸命作ったから、みなさん社会貢献としてこれを例えばお中元で配るとかね、私むしろその方がステータスになると思うんですよね。

世田谷で美味しいチョコレートもらったことがあって。障害者の人たちが作ったチョコなんですけど、おしゃれだしとても美味しいんですよ。こうした品質の良いものであれば誰が作ったっていい値段で売るべきだと私は思うから、そういう意味で「障碍者が作った=安い」ではなくて、「=だからこそ価値がある」いう風な形で付加価値つけて、私は売るべきだと思うんですよね。

それを買う人は絶対にいるから。社会貢献と思って。自分が買ったことによって自分も嬉しいしい。曽根綾子さんじゃないけれど、与えられる人より与える人の方が幸せなんだから、私はそういう日本人の気持ちを育てる方が良いのではないかなと。

 

――その話が最初に来るかなと思ってたんで意外でした。

 あ、そうですか。

 

――もちろん予断を持ってはいけないなと思ってましたが、もっと大きな女性のお話しをされるので意外でした。都議ならばこう、区議だったからこう、そこに住んでる方々のリアルな生活をサポートしていく人なんだなって。むろん障害児の話をするなってわけではなく、それはそれで大事なことだと思います。

 やっぱり障害児がいることで楽しさもあれば苦しさもあるし、その気持ちがわかる。だからこそ私は色んなことやりたいって思ったんです。「障害の子がいるんだから家でその子見てなさいよ」という意見もあるかもしれないけど、だったらその気持ちは誰が国や都に言っていくのって。リアルに分かるからこそ、そばにいて、学校に行って、ママ達からの色んな意見を受けて、実際に自分も見て、その場にいるわけだから、そういうのができるのは自分しかいないんじゃないかなって思って。

 

――僕は障害者の方は普通に世の中に居るべきだと思いますね。

 そうなんですよね。どうしてもほら、隔離されたりするようなところがあるじゃないですか。そうじゃなくて、地域にいて当たり前、みんなでサポートしていこうというのをもっともっと活かしていきたいですね。

 

後編につづく