全国の人々に問いたい。本当に豊洲市場では"不安"ですか?
いきなり恐縮ですが、ただの一民間人である筆者ですが、幸運にも都議会自民党の豊洲市場視察に同行させていただくことができました。都議会自民党の皆様、本当にありがとうございました。
この視察には、以前から豊洲問題を熱心に取材してくださっている有本香氏も同行しておられました。いずれその様子が虎ノ門ニュースで放映されるかと思いますので、まとまった質の高い情報をお求めの方はぜひご覧ください。
さて、本題に入る前にぜひこの記事をご覧の皆様に考えていただきたいことがあります。
それは「本当に豊洲市場では”不安”ですか?」ということです。
豊洲市場地下の土壌の安全性は、専門家会議で明らかにされております。また耐震性も知事自らが検査済証を発行していることが明らかになり、一定の安心は担保されました。
小池知事が「消費者が合理的な考え方をしてくれるのか、クエスチョンマーク(疑問)だ」と述べるなど安全だけれども安心ではないという風潮が出回っているように思われます。
しかし私は、今回の取材で私は豊洲市場が衛生面に対していかに妥当な配慮をしているかを実感いたしました。
私は建築の知識はありませんし、水産流通のことにも素人です。大学で流通論や食品衛生を多少学んだ程度の人間です。むろん、市場の方の解説は十分に伺いましたが何か勘違いがあるかもしれない。
ただ、そういう人間でもわかるほど、豊洲はきっちりと衛生管理に気を配っているのが見て取れました。安全かどうかを専門的に判断することはできなくても、十分にこの施設を作った人たちを信頼することができました。
今回は私が取材で撮影してきた写真を、実際の流通の順番でお見せしながらなぜ私がそこに注目したのかを合わせて解説し、豊洲に対する読者の不安解消の一助になれればと思います。ぜご覧ください。
7街区(水産卸売場棟)
入荷バース
全国から集められた水産物は、まず7街区にある水産卸売棟に運ばれます。ここは入荷のためにトラックを付けるバースというエリアです。ちなみに中央に見えるのは有明にあるユニクロの配送センター。この土地がユニクロが流通の拠点に選ぶほど流通に適した土地であるという証拠でもあります。
エアーカーテンのダクト
納入口は3重のシェルターがあり、その一番外側はエアーカーテンといって風を下方に吹き付けることで内部の空気を逃がさないようにし、外からの土埃や虫などの侵入を防げるようになっております。冷蔵トラックから10.5度の室内へ、冷たいまま商品を運ぶことで鮮度と衛生を保つことができるのです。
低温を保ったまま輸送することをコールドチェーンと言います。築地を通した流通ではこのコールドチェーンが保てないのが大きな課題でした。
マグロセリ場
入荷した水産物はセリ場と呼ばれる場所で取引されます。ここはマグロのセリ場です。他にもう一つセリ場がありますが役割は一緒です。
写真は見学場から撮影したもので、ご覧の通り、卸売場と見学場が完全に仕切られていません。実際に見学の際は、10.5度の室温と、働く人々の声を生で感じられるようになっております。
柱のアール加工
マグロのセリ場の柱の根本です。床と接する部分が直角ではなく曲面になっています。これはアール加工といって、角に雑菌の温床となりやすい汚れやほこりを溜めにくくするための構造です。ただ余分に技術がかかりますから費用もかさみます。それだけ衛生面に気を配っている証拠です。
連絡通路
仲卸業者が6街区(水産仲卸売場棟)へ商品を運ぶための通路です。ターレがすれ違う余裕も十分あります。右手奥には歩行者用の通路も見えており車歩分離もしっかりなされています。
東京都のHPにも同様の写真があって勘違いされやすいのですが、この通路、実は1本ではありません。
このように3本あるんですね。同様の連絡通路が合計4か所あるそうです。
転配送センター
6街区に移る前にもう一か所。
卸にある商品は全て内部の仲卸によって買われるわけではありません。
集荷力の高い築地では、商品が他の市場に転送される場合も多くあり、それは豊洲でも変わりません。築地ではこれらの商品の多くは野ざらしにされておりましたが、豊洲では屋内で保管できるため、より鮮度が高い状態で他の市場に出荷することが可能になります。築地から豊洲へ移転する大きな意義の一つです。
転送される場合は、垂直運搬機(エレベーター)やスロープを使って4階にある転配送センターに運ばれます。
転配送センターにはフォークリフトが置かれていました。
転配送センターではドックシェルターと呼ばれる搬出口からトラックに直接荷付けできます。そのためのフォークリフトです。
ドッグシェルター。トラックからそのまま入出荷可能。 pic.twitter.com/S2JWcfmkkD
— 高橋洋介(図解士) (@zukaiseiri) 2017年3月21日
築地では、トラックの荷台から一度垂直に荷物を上げ下ろししなくてはいけない場合が多かったのですが、豊洲では水平移動するだけで荷物を移動させることができます。これだけでも大変な効率化となるのです。
6街区(水産仲卸売場棟)
卸から商品を仕入れた仲卸は自分の店に持ち帰り、商品を小分けにするなど売りやすい形にして、魚屋や寿司屋などの業者に販売します。
一般的な仲卸店舗
有本さんから取材を受ける仲卸業者の生田よしかつ氏。マグロ屋さんなので大きな冷蔵庫が2つもあります。この広さが1小間といって標準的な仲卸業者の面積です。人がたくさんいるので広さが想像しやすいのではないでしょうか。マグロが切れないというのはデマだということもはっきりとわかります。
半小間店舗
ちなみにこれが半小間。一部の業者はこういう形態での入居です。たしかに横幅はマンガ喫茶並ではありますが、乾物などのお店はこれで十分だったりするためです。
壁の仕切りと床の接する部分がきちんとアール加工してあるのにもご注目ください。
排水溝はこんな感じ
排水溝はなんとステンレス製でした。今回一番びっくりしたポイントです。
カビなどが生えずにとても衛生的ですが、この広い敷地のすべてがこの状態だと幾らかかったんだろうなと別の意味でも驚きました。
ちなみに溝の大きさは大人の手がすっぽり入るくらい。
築地の排水溝よりは小さいですが、そもそも豊洲は床を可能な限り乾いた状態にするドライフロアで運営される予定ですし、排水能力に問題はなさそうです。
衛生のための必需品、手洗器
仲卸の店舗にある手洗器です。これは備え付け。各店舗にあります。
写真ではちょっと分かりにくいですが、身長180センチ弱の私の腕が肘までがすっぽり入ります。これはとても重要なことでして、食品を扱う場合はきちんと肘から爪の先までしっかり洗うことが大事なのです。
ちなみに場内への出入り口には専用の手洗いスペースが設けられています。
4階の出荷場。
また垂直搬送機やスロープなどで4階に上がると一般の業者が商品を積み込むスペースです。見た目はデパートの駐車場に似ています。そして振り返ると
やはりドッグシェルターになっており、水平に積み込みが可能でした。
ここから都内の魚屋や寿司屋、あるいは他の水産業者に商品が出荷されます。
豊洲では、以上の作業工程がすべて屋内でできます。
先ほどの生田氏は「雨にぬれずに作業ができる。こんな施設を遊ばせておくなんて、なんてもったいない」とおっしゃっていました。まったくその通りだと強く同意いたします。
最後に全体の地図を見てください。
7街区から6街区まで、商品が一方通行に流れていることが分かります。
これは万が一汚染された商品が市場内に混入してしまったとしても、他の商品との接触を最小限に減らして汚染の拡大を防ぐとともに、混入経路の特定を容易にするための設計です。
豊洲市場はけれん味のない建物
写真で取り上げた豊洲市場の工夫は、実は一つ一つはけっして目新しいものではありません。悪く言えば使い古された、良く言えば信頼性の高い設計です。
豊洲市場は、けれん味はなくとも、一つ一つ安全性を重視した丁寧な造りの建物なのです。コストはかかっていますが食の安全を求めるために万全を期したことが分かります。
ここで最初の問いに戻ります。
まだ「本当に豊洲市場では”不安”ですか?」
あえて詳しくは書きませんが、築地市場では豊洲でなされたこられの工夫は一切ありません。築80年超の建物には到底求められないことばかりなのです。
冒頭に申し上げた通り、豊洲市場は科学的には安全だが、消費者の安心への信頼は得られていない、というような趣旨の言葉が小池知事から出ました。
しかし、これらの一つ一つの丁寧な仕事を見ても、本当に豊洲市場は信頼できないのでしょうか、安全が守られないと判断されてしまうのでしょうか。
どうか、実物を見てご判断いただければと思います。
番外編
マグロセリ場にあるトイレ
おそらくここを取材する方は金輪際現れないと思います。
ただ衛生を語るうえでトイレは非常に重要な要素でして、ご覧の通り、一切何にも触れずに手を洗うことのできるハンズフリーの設計です。
エアータオルも手洗い台より設置され、飛沫が飛ばないように工夫されています。
そして出入り口の消毒槽は広くまたぎ越せないようになっています。築地のトイレにも消毒槽はありますが、かんたんにまたぎ越せてしまうんですよね。
実際にはこの上にまた何か設置するらしいのですが、こんな細かいところもしっかりと対応してあるのです。