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時事図解

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HACCPの基本的な考え方

前回のエントリーでは、雪印集団食中毒事件はもしHACCPが導入されていれば起きていなかっただろうという内容を書きました。
そして今回ですが、HACCPの基本的な考え方について解説していく予定です。
まあ今回に限ったことではないのですが、私のHACCPの説明は分かりやすさを重視しており、従来の説明と順序が違ったり、細部を省略したりしております。HACCPをより理解したい場合には厚生省のHPなどでパンフレット等をぜひお読み下さい。

www.mhlw.go.jp

HACCPとは?

HACCPとは[Hazard Analysis and Critical Control Point]から頭文字を取った略称のことで、日本語では「危害要因分析必須管理点」などと訳されております。個人的にはandの部分をきちんと訳し、「危害要因分析と必須管理点」と分けて説明するほうが意味が伝わるのではないかと思っています。
HACCPとは大きく分けて二つの段階から成る手法です。

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はじめは【危害要因を分析すること】で、次に【工程内で特に大事な箇所について連続的に記録を取りながら管理すること】によってHACCPが成立します。

さっそくこれらの解説に入りたいところですが、その前に、なぜ今までの衛生管理ではなく、HACCPを新たに導入すべきなのかについて説明をしなくてはなりません。

従来の衛生管理の限界

従来の衛生管理は、安全な作業工程を作り、作業所を衛生的な状態にすれば、そこで扱われる製品も安全なものになるという考え方で行われていました。そして完成した製品の一部を抜き取って検査することで安全性を言わば「確率論的に」保証していました。

しかしこの衛生管理の方法には限界があります。生鮮品は状態が一定ではなく、また汚染物質を完全に除去することも不可能なためです。
たとえば前回取り上げた雪印の場合、扱うものが牛乳である以上どうしても黄色ブドウ球菌が混入していることは避けようがありません。さらに生鮮食品は汚染状態が一様ではなく、何かの手違いで汚染物質の量が飛び抜けて高い生鮮食品が作業工程の中に紛れ込んでしまうリスクは絶対に避けられないことなのです。
また工程内で全ての汚染物質を取り除くことも現実的ではありません。黄色ブドウ球菌は摂氏75℃で1分以上加熱すれば殺菌することが出来ますが、それでは牛乳としての風味が損なわれてしまい、食品としての価値が大きく損なわれてしまいます。これでは意味がありません。

このような状況で黄色ブドウ球菌が何かのはずみで増殖させてしまうと(前回の例では停電)、作業所をどれほど衛生的にしていても食中毒の発生を防ぐことができなくなります。
さらに抜き取り検査という安全確認の方法にも限界があります。仮に全体の中に1%に汚染があった場合、その汚染された製品が検査で発見される確率は1%しかありません。また、その検査対象にのみ汚染があったのか、それとも全体が汚染されているかもさらに検査してみないと分かりません。つまり本当に汚染物質が混じっているかどうかを確実に証明できるわけではないんどえす。

もちろん、それを補うために工程をしっかり管理し、作業所内の衛生管理をしっかりとして有害な汚染物質が混入しないように手を尽くすわけですが、どうしても見逃してしまうリスクは存在し続けてしまうのです。

HACCPで何が変わるのか。

それではHACCPの最初の工程HA(危害要因を分析すること)とは具体的にどんな作業をするのでしょうか。
HACCPでは、食品汚染のリスクを【生物的リスク】【化学的リスク】【物理的リスク】の3つに分類して考えます。

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生物的リスク

微生物、ウィルス、寄生虫など、生物学的な食品汚染のリスクです。
特に微生物やウィルスは目で見ることができず、検体から微生物を検出するまでに時間がかかるため、疫学的知識によって汚染を遮断することが重要になります。

化学的リスク

化学物質によって食中毒が引き起こされるリスクです。具体的にはフグ毒や貝毒といった生物由来の毒のほか、食品添加物のように人為的に混入させる物質のリスク、あるいは作業所で使用される洗剤が混入するリスクなども含まれます。

物理的リスク

原料に混じっている小石などがそのままの状態で食品に混入するリスクや、工場内で使用している機械から部品等が誤って混入してしまうリスクです。機械から部品が誤って混入してしまうリスクなどは避けようがないと思いがちですが、定期点検をきちんと行うことや耐用年数を超えて使用しないなど、正しい使用方法を守ることでリスクは最小限に抑えられます。

 

これらからより具体的に汚染物質を特定し、製品を作る上でどのようなリスクがあるかを分析することがHACCP実施の第一歩になります。

CPとCCPについて

危害要因の分析を終えたら、次は実際の工程でどのように管理していくかを検討します。
まずは作業工程の中で危害に影響する工程を特定します。これをCP(Control Point-管理点-)と呼びます。
さらにこのCPの中でも特に健康上、許容できない重大な危険性がある部分のことをCCP(Critical Control Point-必須管理点-)と設定します。

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CCPでは管理基準を設定し、基準を逸脱していないか連続的に状態を監視記録します。この基準は迅速にモニタリングできる温度や時間といった項目で管理します。また管理基準を逸脱した場合を想定した改善措置を予め設定しておきます。
前回、雪印の集団食中毒事件を紹介した時、脱脂乳を加温する工程がCCPになるという説明をいたしました。脱脂乳を加温し続けると黄色ブドウ球菌が増殖してしまいます。食中毒の場合この黄色ブドウ球菌から発生した毒素エンテロトキシンAが特に問題になります。
毒素エンテロトキシンAは耐熱性であり、通常の工程では発生してしまうと除去することはできません。そのため、黄色ブドウ球菌の増殖が増えてしまう工程を特に気をつけて管理する必要があり、脱脂乳を加温する工程はCCPとして設定し、加温時間や温度の管理基準(Critical Limit)を設定し、その範囲を逸脱した場合の改善措置を講じます。改善措置は具体的には製造ラインを止め、脱脂乳を安全に廃棄、機器を洗浄するなどが必要でしょう。

ちなみにその後の殺菌装置を通して黄色ブドウ球菌を殺菌する工程はCPではあってもCCPではありません。黄色ブドウ球菌を死滅させることは衛生上必要な措置ではありますが、前段階でCCPが管理されていれば毒素エンテロトキシンAの発生は許容できる範囲に収まるためです。
とくに強調しておきますが、HACCPでは汚染物質の完全除去ではなく、人体に影響のある範囲まで残存させないことを目標とします。

またこのCCPは管理状況を連続的に記録管理することが求められます。これは安全に管理されていることの証明であるため、長期的に保存しいつでも見られる状態にすることが求められます。

筆者が見た今までの衛生管理とHACCPとの違い

筆者の感想では、今までの衛生管理は周囲の環境を整えることで【リスクの変動を避ける】ことに主眼が置かれていて、リスクそのものに対しては消極的だったと思います。一方でHACCPは【リスクそのもの特定して管理する】という能動的な対応を取ります。そのため、導入当初は大変でも、作業が定着すればより高い安全性が確保できるようになるのだと思います。
勘違いしないでいただきたいのですが、HACCPは従来の衛生管理を否定するものではありません。従来の衛生管理にプラスしてより積極的に関与していく手法だということです。

HACCPの基本的な考え方についてのまとめ

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HACCPとは科学的にリスクを分析し、特に重要な点は連続することで安全を確保する方法です。CCPがしっかりと管理できていれば、汚染物質が食品中に残存している可能性は極めて低いことが科学的に証明されます。これは従来の抜き取り検査とは違い、全ての製品に対して保証が効きます。
これがHACCPが新たに求められるのかの理由となります。

次回はCPと一般的衛生管理プログラム他について説明します。