もしも、オーベルシュタインとキルヒアイスが意思疎通できたら
新年明けましておめでとうございます。
前回、キルヒアイスのifを考えていて思ったのですが、オーベルシュタインとキルヒアイスは、もうちょっと意思疎通できていれば、最悪の事態は回避できていたのではないかと思いました。
二人とも、ゴールデンバウム王朝を倒し、ラインハルトを皇帝位にあげるという目標では一致していました。
ただ、二人の違いはその性格です。
キルヒアイスは基本的に正義の人です。
対してオーベルシュタインは合理性の人です。
一見相反するように見える二人ですが、お互いがお互いの思考を理解するだけの知性と知識は持ち合わせていました。
キルヒアイス自身も、自分が「武器を持たない人間を撃てない」ほど甘い人間だと自覚していたはずですし、オーベルシュタインはそういう人間を口先だけでも「尊敬」することができました。対立の原因は「ラインハルトに求める君主像」の違いがあったということです。
しかし、現実的にはキルヒアイスはオーベルシュタインのマキャヴェリズムを警戒し、逆にオーベルシュタインはキルヒアイスがラインハルトと親しすぎることを警戒し二人はほどんど会話らしい会話をしていなかったようです。
ラインハルトが元帥府を設立後、オーベルシュタインとキルヒアイスが会談を持っていれば、きちんとした会談をどちらかが望んでいれば、事態はもう少しマシになっていたのではないかと思います。
まずキルヒアイスの甘すぎる点をオーベルシュタインは指摘したでしょう。
キルヒアイスは基本的に優しい人格で民衆に犠牲を出すことを忌避していましたが、そんな彼ですら、アムリッツァ星域会戦では同盟側の兵士たちを大量殺戮しているわけです。
オーベルシュタインから「戦闘なら無辜の民衆をいくら殺しても良いのか」「謀略によって人を殺すのと戦闘で人を殺すことに違いはあるのか」と面と向かって言われればキルヒアイスには返す言葉がなかったでしょう。
またキルヒアイスの性格をオーベルシュタインが読み取れれば、「ラインハルトにとってキルヒアイスは部下ではなく分身」であり、「キルヒアイスはいざというときにラインハルトのスペア」として使えることがわかったのではないでしょうか。
ラインハルトのスペアというのは、軍事作戦能力の他に血統を保つという意味合いもあります。ラインハルトが皇帝になったとき、その血統が皇帝位を継承していくわけですが、一方でキルヒアイスとアンネローゼは子供を作れた可能性もあります。
そうなると、ローエングラム王朝は二つの血統を持つことが可能になります。
少々話は飛びますが、ラインハルトは若くして死んでしまうわけですが、もしもキルヒアイスが生きていたら、ラインハルトの子、アレク大公が即位するまでの中継ぎの皇帝にうってつけの人材なんですね。ラインハルトは絶対に次代皇帝にキルヒアイスを指名したでしょう。
キルヒアイスとオーベルシュタインには共通点があります。
それはお互いが「無私」であったことです。二人共すべてをラインハルトに捧げ、ローエングラム王朝の成立に寄与しました。
その二人がお互いの共通点と特異性を理解し、たとえ思想は違えど、信頼に足る相手だと知る意志と時間があれば、後の歴史展開は大きく違っていたのかなと思います。