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えっ、公園の保育園転用はエゴじゃないの!? 図解で分かる杉並区の保育園転用問題で反対派が無視された理由(3)

有り難いことに、久我山東原の問題に関心を持っておられる方にリツイートしていただきました。

この連載記事はすでに全文を書き終えており、内容に加筆修正を加えつつ、順次掲載していく予定です。

 

こんなに早く目に留まることになるとは想定しておりませんでしたので、少々、気に留めていただきたい点を申し上げます。

私の目的は全体を俯瞰しつつ、問題解決に向かう道筋を考えることにあります。

それゆえ、行政側の視点で問題を考察することもありますし、反対派の援護になるような内容になることもありますので、賛成派、反対派問わず、一つの記事ではなく連載全体を見て判断なさっていただくようお願い申し上げます。

 

なお、今までの記事を含めて全体の構成はだいたいこのような感じで予定しております。タイトルは仮題です。

 

1、久我山東原問題を知ったきっかけ

2、住民が守りたかった公園の価値とは?

3、今までの時系列から全体を把握してみよう。←いまここ

4、そもそもなぜ来年の4月までに保育園が必要なのか?

5、行政が住民を相手にしない理由

6、反対運動は無駄ではなかった

7、都市公園法とはどんな制度なのか?

8、行政の不備を突いて改めて話し合いの場を持とう

 

以上が連載の大まかなスケジュールです。

どうぞ、最後までお付き合いください。また、記事の不備に対する突っ込み、疑問など大歓迎です。仕事の関係ですぐに対応するのが難しい場合もありますが、どうぞよろしくお願いします。

問題解決に向け、まずは今までのスケジュールを確認しよう。

住民が何を守りたいのか、なぜそれを守りたいかは分かりました。

それでは次に行政の視点を確認してみましょう。まずは全体像を把握するために、時系列に沿って起こった出来事を整理してみることからはじめます。

 

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そもそもきっかけは4月18日の「待機児童緊急対策」の発表にさかのぼります。

それまで、杉並区は田中区長の指示のもと待機児童の減少に力を入れ、ある程度の成功を収めてきたのですが、ここにきて来年度の待機児童数が増加するという見込みとなり、新たに補正予算をかけ、待機児童の減少に乗り出します。

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(追記)杉並区議員松尾ゆり様に待機児童緊急対策の発表が3月1日であったとのご指摘を受けました。4月18日に行われたのは緊急事態宣言の記者会見でした。私の調査不足です。過ちがあったことをここに記載し、お詫び、訂正させていただきます。本来は誤った図解も残すのが筋ではありますが、画面構成上難しいため、図解は指摘を受け訂正したものであることをここに記載いたします。

なおこの後の文章に若干の祖語が発生いたしますが、大筋での論旨は変わらないと判断し、あえて加筆修正をしていないことも併せてご報告いたします。

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ところが、この見込みは実はまだ甘いことがその後に判明し、5月13日に「待機児童緊急対策第2弾」を発表します。この第2弾の時点で、久我原東山公園の保育園転用が発表されました。

 

ここでひとつ注目してほしいのは、第1弾と第2弾の発表の間には25日の期間しかないということです。後で詳しく解説しますが、区の職員はたったこれだけの期間で保育園の建設候補地を決めなければならなかったということは記憶しておいてください。

 

その5日後の5月18日には臨時議会で「待機児童緊急対策第2弾」が提出されます。

ちなみに、自民・無所属クラブの松浦 芳子氏(とおそらく所属会派の他の区議4名)と区民フォーラムみらいの山本あけみ氏は転用される公園を見て回ったと公表しているのが確認できました。

もちろん他の区議も独自に調査している可能性は十分にあります。境氏は区長のインタビュー記事で区議がきちんと地元の意見を吸い上げたかを疑問視していましたが、区議が何もしていなかったわけではなかったようです。

 

特にこのあたりが地元であるという区議の山本あけみ氏はブログにてこの問題を区議からの目線からまとめられており、この問題を調査するうえで非常に参考になりました。興味のある方はコメント欄を含めてご一読いただくとより理解が深まるかと思われます。

blog.goo.ne.jp

 

とはいえ5日間では区議の皆さんも満足なヒアリングなどできなかったはずです。いかに行政側が急ぎ足で計画を策定し、実行しようとしたかがうかがえます。

この間わずか30日の出来事です。

 

追記:区議の方々が資料を受け取った時期はもう少し早いらしいのですが、やはり十分な調査の時間はなかったと思われます。

 そして反対運動が起こる

 5月21日。

久我山東原公園の保育園転用について住民説明会が行われましたが、参加希望者が多く急きょ2回目が行われました。この1回目の説明は割愛します。

 

5月29日、2回目の住民説明会。

ここでテレビ取材が入り、「保育園建設を訴える母親に住民が怒号を浴びせる」といった意地の悪い編集の報道をはじめ、TV局各社でこの問題が取り上げ、全国にこの問題が知れ渡るようになります。

 

6月3日。

説明会で納得しなかった反対派住民は代表を立て、区長と直談判をします。話し合いは1時間半ほど行われたようですが、区長はあらゆる代替案に耳を貸さなかったようです。

 

6月15日。

杉並区議会本会議で住民からの保育園建設に「久我山東原公園への保育施設建設計画」の見直しに関する陳情」2件の不採択が正式に決定され、住民の反対運動は、少なくとも民主的手続きにおいては、行き場を失ってしまいます。

 

2回目の説明会から陳情の不採択まで、約18日間の出来事です。

その間、住民側は公園転用を止めてもらうように行政に働きかきますが行政はその全てを突っぱねます。

ちなみに陳情の不採択は、15日の本会議に先立つ6日の保健福祉委員会で決定されているため、実質的には2回目の説明会からわずか1週間程度で「民主的手続き」が全て完了してしまっているわけです。

これでは住民側が説明不足と感じても無理もないことでしょう。

 

その後も住民と行政の対立は続き、6月26日の「TVタックル」放映や7月7日に発表された境治氏のインタビューにて田中区長自身がこの問題に対する自身の考えを語っていますが、住民との直接の対話はなく、7月25日の第3回住民説明会では、住民側が行政側に詰め寄る一色即発の状態にまでなったようです。

bylines.news.yahoo.co.jp

 

時系列全体を見渡すと、行政側がいかに急いで計画を進めようとしているかが分かります。その急ピッチな姿勢こそが住民の怒りを買い、問題をより悪化させてしまっているのですがどうして行政側はここまでして保育園の建設を、すなわち待機児童ゼロを目指すのでしょうか。

 

この問題の一番のポイントはここにあるような気がします。

 

次回に続きます。