豊洲がどうのこうのという前に築地を使い続けるのは大問題! 図解でわかる築地市場の問題点(後編)
前回の記事では主に建築物としての面から築地市場がいかにリスキーな建物であるかを指摘させていただきました。
余談ですが、リスクという言葉の本来の意味は「将来への不確実性」だと金融工学の先生が言っておりました。つまり何が起こるか分からないという意味だと。その意味で、築地は大変に建築物として実にリスキーです。
築地市場は不衛生
それに対して衛生問題の面ではリスキーなどという言葉では表現しきれません。関係者の方々、本当に申し訳ありませんが言わせていただきます。
築地市場は衛生面で問題がありすぎです。
開放性施設であること
多くの飲食店でドアが二重になっている理由をご存知ですか?
あれを風除室といい、風が吹き込んでほこりが店内に入らないようにする衛生のための設備です。(ほかにも店内の温度を保つ役割など複数の役割があります)
当然ですが、飲食物にほこりがつくのは衛生的に良くないことです。
しかし築地市場の写真を見てもらえばわかる通り、築地市場は屋外と屋内を仕切る壁がありません。
そのため、ほこりどころか、直射日光、風雨、そして野生動物など衛生的に良くないものが自由に出入りできてしまいます。
東京卸売市場HPの「新市場Q&A なるほど納得!築地市場移転」では築地市場の構造的な問題を以下のように解説しています。豊洲の説明は、読みかえれば築地ではそれができていないという指摘です。
Q
豊洲新市場における品質・衛生管理について詳しく教えてください。
考えてみてください。普段利用するスーパーがテントのような構造で、風を遮るものは何もなく、商品に直射日光や風雨が当たり、店の端っこには野生動物が駆け回っている。そんな場所で食品を買いますか?
老朽化の問題
不衛生さにさらに拍車をかけるのは、築地市場の建物が老朽化しているという事実です。
まず驚いたことに、築地には空調設備がありません。どんなに氷で魚を冷やしておいたとしても、やはり施設全体が冷えていたほうが良いのは当たり前です。
そこから約30年超古い施設のままでスッタモンダした。その間世間の衛生基準はどんどん上がり築地市場は取り残されつつあった。それに驚くことなかれ築地市場には空調がない。このクソ熱い夏でも常温の施設で生鮮食料品の取引をしている。海外の衛生基準は厳しい。当然築地市場の施設では輸出は無理。
— 生田よしかつ (@ikutayoshikatsu) 2016年8月2日
さらに問題は雨漏りです。こちらも先ほど引用させていただいた生田よしかつさんが衝撃的な映像をツイッターにあげてくれていました。
今朝の豪雨時の築地市場仲卸売り場の様子。ちなみに雨漏り(雨降り?w)してたのはここだけじゃねぇよ。早く移転したい。 pic.twitter.com/VnVinHvVOr
— 生田よしかつ (@ikutayoshikatsu) 2016年8月20日
屋根から伝って流れ落ちた雨が清潔なはずがありません。目に見えなくても、雨は周囲に飛散しています。食品に直接触れなくとも外箱や発泡スチロールには掛かります。それを触った手が食物に触れるのでは、梱包の意味がありません。
築地市場の施設状況では、現代的な食品衛生の基準が守れるはずがないのです。
排気ガスには豊洲で問題になっているベンゼンだって含まれている
それに加えて、築地市場ではあの有名なターレを含めた多くのガソリン車が通行しています。当然、車からは排気ガスが出ます。(もっともターレはだいぶ電動化が進んでいるそうです)少し前の資料ですが、築地の一部は交差点なみの排気ガスの濃度だっという調査もありました。
築地関係者もこの排気ガスの問題にはきちんと取り組んでくれているいるわけですが、それでもやはり車が通る以上、排気ガスは避けられません。何度もスーパーを例に例えて申し訳ありませんが、ガソリン車がスーパーの店内を走っていたら衛生的のはずがないですよね。
水たまりは仕方ないで済まさないでほしい
今回、この記事を書くことにした一番の動機がここです。
豊洲の移転の話で、豊洲では海水で床を流せないから蚊やボウフラが沸く、という話を何度も目にしました。
衛生面を気にするなら、そもそも床に水たまりなんかを作らないでほしい、というのが本音です。ちなみに熱帯にあるシンガポールでは水たまりを放置すると罰金刑に処せられます。そこから蚊がわいて疫病の原因になるからです。
確かに魚を扱うときには水が必要になるというのは理解できます。
特に魚は生ものですし、そういう類のものが寄ってきやすいというのもわかります。
床が濡れるのは仕方ないことでしょう。
ですが、消費者に直接目に触れないからといって、床がそんなに不衛生な状態になっているのを放置して良いのでしょうか。海水を撒いておけば安心と古い知識で自己完結してはいけないのではないでしょうか。
そもそも食品衛生において、床は常に乾燥状態にさせなくてはいけないものなのです。こんなことはそこいらの牛丼屋のアルバイトですら知っています。なぜなら私がアルバイトの時に知った知識だからです。(もっとも別に食品衛生の講義を大学で受けたこともあります)
ボウフラは乾燥した場所では生きていられません。同様に食中毒の原因となる細菌の発生も抑えられえますし、悪臭も抑えられます。ネズミやゴキブリなどの野生動物も湿ったところを好む性質があるので近寄りにくくなります。
床は清掃しているとき以外は常に乾燥している状態が理想(というか当たり前)なのです。
この一例を取っただけでも築地の衛生観念推して知るべしなのです。
築地の食品は衛生状態を悪くする環境に囲まれている
以上のように、築地市場は施設としての衛生管理がまったくなっていません。もちろん、築地の方々はそれぞれに衛生状態に気を配ってくれていると思います。
ですが、いかに個人の方が気を付けようとも環境そのものが不衛生では意味がないのです。そして築地から運ばれた先でどんなに衛生管理を徹底したとしても、そもそも大元の築地が衛生的でないならその努力が無駄になってしまうのです。
正直、今回私も調べるまで、築地がこのような状態だとは思いもしませんでした。
また海水の例に見て取れるように、築地市場で働く方々が、衛生観念が無いとは言わないにしろ、かなり偏った知識、あるいは時代遅れの知識のままでいるということもわかりました。
「食の安全」というのは築地市場の移転問題において重要な要素の一つでしょう。特に我々日本人は「食の安全」に敏感です。
前回宣言した通り、この記事では豊洲移転に関わる意見は言いませんが「食の安全」を理由に移転を反対するなら、移転反対をしている業者は即刻築地での営業を停止しなくてはいけないことになります。
この件に対する移転反対派の意見をぜひお待ちしております。
(※補足)
築地で使用されている海水は濾過されたもので、海の水をそのまま撒いているわけではなくその点では衛生面での問題は無いと思われます。誤解している方がけっこういるようなので補足です。
ちなみに移転先の豊洲で海水が使用できないことを煽るメディアがたくさん見受けられましたが、食品衛生の基礎すらまともに勉強していないか、あるいは知っていて無視しているかの2つに1つだろうなと思います。きちんと浄水処理され、消毒されている水道水のほうがどう考えたって衛生的ですよ。