その後のユリアン
言わずと知れた作者、田中芳樹さんはエンディングをユリアンで終えるか、それともミッターマイヤーで終えるかで迷ったそうです。結局、赤ん坊のいるミッターマイヤーが物語を終える役割を負ったわけですが、ユリアンも物語の最後に去就を尋ねられて、まだ何も決まっていないと答えます。
それまで、言わばヤンの思想を残すために戦ってきたユリアンですが、その後はどうしたのでしょうか?
ひとつだけはっきりしているのは、ユリアンは人生のどこかのタイミングでヤンを中心としたイゼルローン時代の回顧録を書いているということです。つまりそういう手記をかける程度には長生きしているんですね。
あのあと、一度ハイネセンに帰ったことは間違いありません。
ヤンを弔う必要がありますから。
その後、ハイネセンに残ったかというと、それは難しいんじゃないかなと思います。
ユリアンはハイネセンを自治区としてでも残したという意味では英雄です。
一方で、ハイネセンの去就を一人で決めてしまったという意味では民主主義の敵でもあります。そういう解釈をする人間は必ず現れるでしょう。
ユリアン自身は必死に戦っていただけなのでしょうが、結果としてユリアンは盛名と、多くの敵を作ってしまっています。ラグナロック作戦後のヤンにも似た状態になってしまったのです。
ヤンはまだ、元元帥という肩書きが彼を守ったでしょう。しかしユリアンは同盟の軍人としては中尉でしかありません。そして受け入れるハイネセンにユリアンを守る余裕はなさそうです。
ただ、考えてみるとユリアンは我々の感覚で言えば、高卒。
大学に始まる高等教育を受けていません。さらに士官学校にも行っていないので、身分としてはかなり中途半端です。
そこで思うのですが、ユリアンは学生になったのではないでしょうか?
歴史の中でのヤンの立ち位置を解説するためには歴史を学ばなくてはなりません。
あるいは政治家として活動するにしても、何かしらの高等教育は受けるべきです。
今後の帝国が中興期に入るところを考えると、法学あたりが適切でしょうか。
おそらく、そう遠くない将来、フェザーンには新しい大学ができるはずです。新しい帝国を支える高級官僚を育成するための機関が必要だからです。
ユリアンが学問を志すならば、ヒルダはユリアンを積極的に招待するでしょう。なにせユリアンは、ラインハルトに形だけでも勝利した第一級の危険人物です。監視の意味合いも込めて、間近に置きたがるはずです。
状況が異なりますが、退役後のヤンもフェザーンで監視下に置かれれば、その後の混乱は起きなかったはずなのですよね。ラインハルトはこういうところで変なミスをします。
物語終了後、ユリアンは素性を隠してフェザーンで学生になるというのが私の予想です。隣に座っていた人物が、実は数年前は一軍を指揮していたなんて、どんな小説の話だよって感じですよ。まあ、事実小説の話なんですが。
余談ですが、ユリアンには身寄りのない彼女がいるんですよね。
学生結婚ですか、そうですか。